石破茂首相は拡大し続けるインバウンド、そして日本の観光についてどう考えているのか。過去に掲げていた主張から見えるもの
2024年、海外から日本に訪れる訪日外国人旅行客は過去最高の3337万9900人(1~11月累計、日本政府観光局)となり、観光名所だけでなく、多くの場所で賑わいを見せている。 【画像】石破首相はインバウンドについてどう考えるか。渋谷にもこんなに人が… しかしオーバーツーリズムを含む訪日客トラブルなど、様々な問題も浮き彫りになってきた。 日本のトップとして日本の行く末を考える石破首相は、どう考えているのか。 今月刊行された石破首相の新著『私はこう考える』(新潮新書)は、かつて石破氏が新潮新書から刊行した4作から、その思考の真髄がわかる論考だけを集めて編まれたものである。 同書に所収されている2017年の文章からは、首相の観光業やインバウンドへの基本的な考えが伝わってくる。 その主張は、どういうものだったのか。
労働生産性を上げるという視点
これからの日本は、海外からの投資を呼び込むと同時に、労働生産性を上げていくことが不可欠です。 労働生産性とは、ごく簡単に言えば、労働者一人が1時間に生み出す金額のこと。労働生産性が高い、ということは1時間あたりに多くの金額を生み出しているということですから、効率良く働いていることになります。 そもそも、日本の労働生産性は世界の中で高いほうとは言えません。何となく「日本人は勤勉に働いて、不況とはいえ、ちゃんと稼いでいる」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実際にはそうでもないのです。 たとえば、1人あたりの名目GDPを見た場合、日本は約3万6千ドルで26位。 1位のルクセンブルク、2位のノルウェーあたりは、人口が少ないので単純に比較できないかもしれませんが、オーストラリア(5位、約6万1千ドル)、アメリカ(10位、約5万5千ドル)、ドイツ(18位、約4万6千ドル)と比べても、かなり低いことは確かです(2014年)。 業種別で見ても、サービス業の労働生産性はアメリカを100として見た場合、ドイツが87.6、フランスが76.2、イギリスが67.9で日本は53.9です(2013年)。韓国の36.3よりは良いとはいえ、自慢できる数字ではありません。 なお、ここで言うサービス業とは、接客業のことだけではなく、「電力・ガス・水道」「建設」「卸売小売り」「飲食・宿泊」「運輸・倉庫」「金融・保険」を含んでいます。 この中でも「飲食・宿泊」の低さは顕著で、アメリカを100とした場合、26.5です。かなり大雑把に言えば、アメリカ人が1時間で生み出す金額を、4時間かけて生み出しているということになります。 これらはすべて決して良いことではありませんが、この低さは「伸びしろ」を示していると考えられる、ともいえます。