長谷部誠が最後まで貫いたプロフェッショナルな姿勢「サッカーはそんなにうまくいくもんじゃない」
「僕の子どもでもおかしくない年齢ですから(笑)」
引退表明の記者会見の時もそうだった。自身の去就を明らかにして、チーム一丸となってラストスパートを成功させなければならないと語気を強める場面があった。当時のフランクフルトは思うように勝ち切れず、少なからず不穏な雰囲気が漂っていた時期だ。 「雰囲気はそこまでポジティブではないですが、でも僕はこうした状況を何度も体験してきました。ここから抜け出すために大事なことはただ一つ。一致団結すること。それもチームだけではダメ。スタジアムのファン、街のみなさん、すべてが一つになること」 長谷部自身、ファンのサポートを受けることで大きな力を生み出せることは誰よりもわかっている。そしてファンはきっとチームのために無償の愛を注いでくれることもわかっている。それでもプロの選手としてそれがなければ自分のパフォーマンスを出せないというのは、甘えでしかないと厳しい姿勢を打ち出していた。 「僕ら選手がまずピッチで見せなければならない。それが第一歩。それがあってはじめてファンの反応が起こるんです。(長谷部が先発した第29節の)シュツットガルト戦では前半ひどいプレーをしてしまいました。それでも試合後にファンのもとに足を運んだら、みんなは僕らをサポートしてくれました。僕らチームはピッチで示さなければならない。スタジアムはそこから燃え上がる」 振り返ると長谷部はよく選手としての、チームとしての心構えや意識の持ちようについて言及していた。やろうとしているだけじゃダメだぞというメッセージを送っていた。若い選手は試合となると自分のことで手いっぱいになる。でもみんなが自分のことしか意識できなかったらチームとしてのかみ合わせは決して強靭にはならない。若さではなく、やるべきことを認識して取り組もうとするかが肝心なのだ、と。 「チーム内でも話をしています。若い選手が多いですし、別の世代の選手たちともいえる。それこそ僕の子どもでもおかしくない年齢ですから(笑)。僕も含めてリーダーシップを持った選手がピッチ上でも、控室でも見せていかないと。僕らのホームスタジアムでは、若かろうが誰だろうが、情熱を感じて燃え上がることができるはず。若い選手にもそれを期待していますし、僕も影響を与えられるようにしたいと思います」 年齢は数字だと話していた長谷部だからこそ、40歳という年齢だからできないわけではなく、自身のコンディションやプレークオリティそのものを先入観なしで見てほしいと思い続けていたことだろう。だからこそ逆に若いからリーダーシップが発揮できないというのも違うのだ。その資質や気質を生かせるようになってほしいと願っているはずだ。