「妻が専業主婦」世帯の少子化に「異変」。いま「在宅育児手当」の整備が急務だ【少子化対策の真実3】
本連載では、大和総研のマクロ・ミクロの医療保険データ分析から分かった、出生率の変動要因と少子化対策のあるべき姿について3回連載で紹介する。 【全画像をみる】「妻が専業主婦」世帯の少子化に「異変」。いま「在宅育児手当」の整備が急務だ【少子化対策の真実3】 これまで、正社員などとして働く「被保険者」の女性に向けた効果的な少子化対策について論じてきた。 連載最終回の今回は、夫などの扶養に入る「被扶養者」の女性について述べる。
「被扶養者」の出生率は2018年度から急速に低下している
図表1は、医療保険制度別の被扶養者女性の出生率の推計値である。長期のデータがとれる健保組合と協会けんぽを見ると、2006年度から2017年度ごろまでは、年度により若干の増減はあるものの、概ね出生率2.2前後で安定していた。 だが、2018年度からは一転して出生率の急低下が始まる。2017年度の出生率(推計値)は健保組合で2.22、協会けんぽで2.21だが、いずれも2022年度にかけて5年連続で低下し、2022年度は健保組合で1.72、協会けんぽで1.67と、わずか5年間で0.5以上も出生率が低下している。 医療保険制度ごとに出生率の水準には差があるが、2018年度以後、毎年出生率が下がり続けていることは、どの制度でも変わらない。女性が被扶養者の世帯で異変が起きているのだ。
2018年度から妊産婦のなかで被扶養者は少数派になった
ではいったい、女性が被扶養者の世帯に何が起きたのか。 筆者は、出産した女性(妊産婦)の中で、被扶養者が少数派となる中で、女性が被保険者の世帯との相対的な世帯所得の格差を意識しやすくなったためと考えている。 図表2は、出産した女性(妊産婦)に占める被保険者と被扶養者の割合の推移である。2008年ごろまでは、乳幼児健診や児童館の乳幼児クラブなどに来る母親の7割ほどは、いずれ再就職するつもりがあるとしても、少なくともいったんは仕事を辞めた「被扶養者」の母親だった。 しかし、徐々に職場復帰を控えた産休・育休中の「被保険者」が増えていき、2018年度にはついに多数派を占めるようになった。2021年度では被保険者が6割を占める。現時点では統計を確認できないが、トレンドを踏まえると2024年度現在ではおそらく7割近くになっているだろう。