「妻が専業主婦」世帯の少子化に「異変」。いま「在宅育児手当」の整備が急務だ【少子化対策の真実3】
「在宅育児手当」の効果が高いと考えられる理由
在宅育児手当とは、幼稚園や保育園等に未就園の「乳幼児」を育てる世帯に手当を支給する施策で、北欧諸国や韓国などで実施されている。日本でも、滋賀県高島市、東京都江戸川区など自治体レベルで実施例がある。 保育所には多額の公費助成が行われており、0歳の4月から3歳4月までの3年間で子ども1人あたり736万円もの公費が投入されている(2020年度、大和総研推計)。保育所を利用せずに「被扶養者」が家庭で乳幼児を育てている世帯は、その支援から漏れているとも言える。3歳未満の乳幼児を家庭で育てる世帯に「在宅育児手当」を支給することは、子育て支援を公平に行う観点からも正当化できる。 3歳未満の保育所の利用料は、自治体により差はあるが、より所得の高い世帯ほど保育料が高くなる「応能負担」になっている。つまり、公費による助成は世帯所得が低い世帯ほど手厚くなっている。在宅育児手当についても、これにならって、所得がより低い世帯ほど支給額が多くなる仕組みに設計するとよいだろう。
費用対効果の面から少子化対策の「刷新」を
岸田政権が策定した子育て支援策の中には、少子化対策としての効果に疑問符が付く施策が少なくない。 こども・子育て支援を継続的に実施するためには、客観的なデータに基づいた「少子化対策としての費用対効果」を高めることで、国民の納得感を高める必要があるだろう。 産休・育休を経て職場復帰する「被保険者女性」と、妊娠・出産を機に退職する「被扶養者女性」ではそれぞれ課題が異なる。 「被保険者女性」に対しては、配偶者の男性を含めた働き方改革によって、仕事と子育ての両立を支えていく施策が必要だ。現金給付が必要なのは、一定所得以下の「被扶養者女性」であり、「在宅育児手当」の導入が妥当だ。 新政権では、客観的なデータに基づいた「少子化対策としての費用対効果」を高める施策のブラッシュアップを行うとよいだろう。
是枝俊悟