“ミシュランの星”を獲得したレストランのほうが、「数年後に閉店」する確率が高いワケ
驚きの閉店率
9月、『ミシュランガイドニューヨーク』に12の新しいレストランが追加された。「高級フランス料理」から「エコシック」にいたるまで、さまざまなジャンルの料理を提供するこれらの店は、今回の成功を祝うことだろう。 価格以上の満足感! 「ミシュランガイド京都・大阪2024」に選ばれた店々 タイヤメーカーでありながらレストランの評論も手がける同社のガイドブックに掲載されることは、高級レストランで最も切望される「ミシュランの星」獲得への第一歩となる。 しかし、学術誌「ストラテジック・マネジメント・ジャーナル」に最近掲載された研究によると、レストランは「星ナシ」でいるほうが良いのかもしれない。 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの経営学部助教ダニエル・サンズは、2000年から2014年の間にニューヨークにオープンし、米紙「ニューヨーク・タイムズ」のレストランレビューで星を獲得したレストランのその後を追跡した。 その結果、これらの前途有望なレストランのうち、ミシュランの星を獲得した店は獲得しなかった店に比べて、その後数年で閉店する可能性が高いことを発見した。場所、価格、料理の種類などを考慮しても、この傾向は変わらなかった。 調査したレストランのうち、2005年から2014年にかけてミシュランの星を獲得した店の40%が、2019年末までに閉店していたのだ。
星がもたらす数々のリスク
ミシュランの星を獲得することで、その店は注目を集める。今回の調査から、新たにミシュランの星を獲得したレストランは、グーグルの検索数が3割以上増加していたことがわかった。 しかし、その名声には代償が伴う。まず、店の顧客が変化する、とサンズは言う。脚光を浴びることで客の期待が高まり、遠方からも客が訪れるようになる。顧客のより大きな要求に応えるには、さらにコストをかけなければならない。 第二に、ミシュランの星を得ることで、レストランは多方面からの高い要求に応えなければならなくなる。原材料の供給業者や店の賃貸オーナーなど、彼らが取引する企業は、この機会を利用してより多くの額を請求するようになる。シェフたちも、自らの評価を給料に反映させたいと考え、競合他社に引き抜かれる可能性が高くなる。 賞が良いことも悪いことももたらす、というのは飲食業界に限ったことではない。いくつかの研究によると、受賞歴のある人間が経営する企業は、経験や受賞歴のないライバルたちの企業と比べて、業績が劣ることがわかっている。ミシュランの星を獲得したシェフと同様、スーパースターのCEOは、より高額な給与を要求し、気が散りやすく、本の執筆や委員会などの参加により多くの時間を費やす。 出版業界においても、賞には危険が伴う。受賞作品は受賞前よりも厳しく評価されるようになり、次点の作品よりも評価が悪くなるケースもある。 成功したいレストラン経営者にとって、ミシュランの星はおそらく、追求しないでいるには魅力的すぎる。だが、単にビジネスを続けたい人にとっては、獲得しないままでいるほうが安全なのかもしれない。