ウクライナ軍、黒海での「海戦」を撮影…海上の「戦略拠点」からロシア軍を撃退した、猛攻撃の様子を公開
<黒海にあるガス掘削施設群「ボイコ・タワー」は重要な戦略的資産となっているが、現在はウクライナがロシアから支配権を奪還したとされている>
ウクライナ軍とロシア軍が、黒海のガス掘削施設付近で戦闘を繰り広げた場面だとされる映像が公開された。この施設をめぐっては、ロシアの本格的なウクライナ侵攻が始まって以降、両国による激しい争いが繰り返されている。動画には、炎を上げる標的に向けて兵士たちが無数の銃弾を撃ち込むシーンのほか、爆発音も収められている。 【動画】ウクライナ軍、黒海での「海戦」を撮影…海上の「戦略拠点」からロシア軍を撃退した、猛攻撃の様子を公開 映像は9月29日、ウクライナの報道機関TSNが公開した(撮影日は不明で、検証はされていない)。「独占報道」と記されているこの映像は、クリミア半島付近で夜間に撮影されたものとされている。キャプションには、「ウクライナ軍はペトロ・ゴドバネツからロシア軍を排除することに成功した」(翻訳)とある。 ウクライナ・ニュース・ライブも同じ映像をXに掲載し、「黒海での夜間襲撃を受け、GUR(ウクライナ国防省情報総局)の兵士らが、燃えている掘削施設『ペトロ・ゴドバネツ』に向けて12.7ミリ機関銃を発射している」と伝えた。 一方、この映像をXに投稿したロシアとウクライナの戦争に関する情報を英訳する独立メディア・プロジェクト「WarTranslated」は、「ロシアが支配する黒海のガス生産施設の1つであるペトロ・ゴドバネツで、襲撃が試みられた」と書いている。 「国家国境警備隊の特殊部隊『DOZOR』とGURの部隊が任務に当たっている」とWarTranslatedは説明している。 ■基地、ヘリパッド、ミサイルシステムの役割も担う重要施設 ペトロ・ゴドバネツは、2014年のロシアによるクリミア併合後、親ロシアのクリミア当局によって奪取され、2023年9月にウクライナが奪還したと発表した4つのガス掘削施設のうちの1つだ。黒海北西部に位置し、クリミアとオデーサの間にある掘削施設群「ボイコ・タワー」は、誰が支配しているのか詳細は明らかになっていない。 ボイコ・タワーは、戦争が始まった際に戦闘の舞台となったスネーク島の近くに位置するため、重要な戦略的資産となっており、戦力展開のための基地、ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)、長距離ミサイルシステムの機能も担っている。 トルコのイスタンブールに拠点を置く独立系海事コンサルティング会社「ボスポラス・オブザーバー」のヨリュク・ウシュクは、今回何が起きたのかは不明だが、この掘削施設は以前から非常に不安定で、整備もされていないと本誌に語った。 ■ロシア軍部隊は施設への上陸と奪還を試みたか ロシア軍は高速の小型ボートを使って、しばしば周辺で偵察を行っており、「上陸を試みて迎撃されたのかもしれない」とウシュクは述べる。「ウクライナの定住地があるわけでもないので、ロシア軍が上陸して奪還を試みたか、爆弾を仕掛けようとした可能性がある」 ウクライナは、ロシアの黒海艦隊に対して繰り返し攻撃を行っている。9月にはロシア南部クラスノダール地方ノヴォロシースクの港を水上ドローンで攻撃した。 ウクライナは、水上ドローン「マグラV5」を使ったロシアの艦艇への攻撃を強化しており、ウクライナ国防省情報総局は5月、ロシア艦艇は5億ドル相当の損害を受けたとは発表している。
ブレンダン・コール