創業100周年の老舗「洋菓子のヒロタ」に2度目の経営危機…債務超過転落と手持ちの現金が1億円を下回る非常事態に
セールスポイントの「手軽」であることはむしろ弱点に
「洋菓子のヒロタ」は消費者の心をつかめず、時代に乗り遅れてしまった印象を受ける。 対照的に永谷園が2013年に買収した、麦の穂ホールディングス(現DAY TO LIFE)が運営するシュークリーム店「ビアードパパ」の業績は極めて好調だ。 この事業を含む永谷園の中食その他事業の2024年3月期の売上高は、前期比15.2%増の150億円。コロナ禍で売上は一時100億円を下回ったが、コロナ前を回復するどころか大きく上回っている。 「ビアードパパ」は定番のパイシュークリームのほか、カリカリとした食感のクッキーシューに加え、期間限定のシュークリームを1年通して数多く送り出している。 2022年度の段階で店舗数は250。このうち122はフランチャイズ加盟店だ。品質コントロールが難しいフランチャイズが半分ほどだが、月替わりで季節商品を開発している。 洋生菓子を製造するモンテールはスイーツに関する消費者調査を行っている(「スーパー・コンビニ スイーツ白書」)。 その中で、魅力を感じるスイーツの食感の変化を調べており、2023年の「なめらか」は38.5%と最も高いものの、前年から3.5ポイント下げた。その一方で、「ふっくら」が2.4ポイント、「しっとり」が0.9ポイント上昇している。 スイーツに対する消費者の意識は常に変化するのだ。スイーツの製造会社はその消費者意識を捉える、もしくは提案しなければならない。「ビアードパパ」はそれに成功しているように見える。 「洋菓子のヒロタ」のように、定番商品を手頃な価格で売るという手法が通じる時代ではなくなっているのだ。
立地特性と販売する商品にギャップが生じる
ヒロタは100周年を記念して「動物シュークリーム」を販売している。アニメや漫画のキャラクターのような可愛らしいものだ。しかしこれを銀座の旗艦店で販売するのは完全にミスマッチだろう。 銀座は一流のパティシエによる趣向を凝らした洋菓子から、三越に出店するような定番ブランドまで、数々の名菓子に彩られたエリアだ。そこに旗艦店を出店するのであれば、店舗限定の商品を投入するべきだろう。 役員体制が十分なのかどうかも疑問。社長の遠山秀德氏は元シダックスの役員を努めた人物だ。 取締役の伊佐山佳郎氏は生え抜きだが、すでに年齢は60歳を超えている。他の取締役2名は増資を引き受けた出資者であり、洋菓子店の経営に深く関わってきたようには見えない。 かつて隆盛を誇った「洋菓子のヒロタ」だが、現在の店舗数はわずか7だ。経営危機を早期に脱し、顧客と向き合うタイミングが訪れているように見える。 取材・文/不破聡 撮影/集英社オンライン編集部
不破聡