大家族への贈り物は「甲子園」 東海大菅生エースの恩返し センバツ
身長190センチのエースは両親と祖母、きょうだい7人という大家族で育った。開催中の第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社など主催)に22日、登場する東海大菅生(東京)の日当(ひなた)直喜投手(3年)だ。 東京都墨田区出身で、7人きょうだいの5番目として生まれた。タクシー運転手の父喜彦さん(50)は地元の少年野球チームのコーチを務めており、保育園の卒園式で「プロ野球選手になってお母さんたちに家を買いたい」と宣言した。小学1年で父のチームに入り、練習や試合が続くようになると、母直美さん(50)は1日に5回洗濯機を回すこともあった。 家族はいつも和気あいあい。きょうだいはよくトランプをしてにぎやかに遊んだ。日当投手は中学卒業後は東海大菅生に進学。きょうだいが多い一家にとって私立校に通わせるのは楽ではないが、両親は野球に打ち込む息子を応援してきた。 高校は親元を離れて寮生活。家族とはテレビ電話で頻繁におしゃべりする。特に長兄の裕二さん(29)と長姉の小島愛美さん(25)は「何でも言いなよ」と相談に乗ってくれる。無料通信アプリ「LINE(ライン)」のやり取りで元気がないと感じれば電話をかけてくれるという。 昨年11月13日にあった秋季東京大会の決勝。この2日前が両親の結婚記念日で、日当投手は「甲子園をプレゼントする」と誓ってマウンドに上がった。直美さんがスタンドで見守る中、135球の完投勝利。センバツをぐっと引き寄せた。その晩、日当投手は直美さんの携帯電話を鳴らし、「いいプレゼントを届けられたかな?」と語りかけた。 いよいよ本番。日当投手は「家族がいなかったらここまで来られていない。恩返しがしたい」と、感謝を胸に甲子園のマウンドに立つ。【加藤昌平】