政府が「地方創生」失敗を認めた…多くの人が知らない「東京一極集中」の本当の現実
移住は大きな流れになっていない
一方、東京一極集中をめぐっては「地方移住」を希望する人の増加が取り上げられることが多い。これも現実を正しく捉えているわけではない。 確かに、移住する人は増加傾向にはあるが、地方移住者が大きな流れになっているかといえばそうではない。 国土交通省の首都圏白書によれば、東京都の30代~40代は2019年には転入超過だったのが2023年には転出超過へと転じたという。だが、30代の転出先を確認すると、さいたま市(埼玉県)、茅ヶ崎市(神奈川県)、横浜市(同)、流山市(千葉県)、町田市(東京都)といった東京圏に位置するベッドタウンが上位を占めているのだ。 東京23区の住宅価格が高騰したため、購入できる物件を求めて郊外に移り住んだということだろう。転出者が増えても東京圏の中を移動しているのでは一極集中の是正にはつながらない。 政府が東京一極集中の是正を強化するならば、まずは全体の過半数を占める9道県の中に位置する政令指定都市の梃入れから始めることだ。すべての「地方」に東京圏からの人の流れをつくることは理想ではあるが、かなりの労力と時間を要し現実的ではない。人口減少のスピードの速さを考えれば、メリハリを付けざるを得ない。 それぞれの地域の「人口の受け皿」となるよう都市機能のバージョンアップを図るのである。人々を惹きつける魅力ある大都市となるには、人口が減っても成長を続けられるよう産業基盤を質的成長モデルへと再構築することが不可避だ。そもそも成長を見込める企業が乏しく雇用の少ないところに人は集まらない。 産業基盤を再構築することによって、これらの政令指定都市においても男女を問わず「希望する仕事が見つかる」という状況をつくることができれば、「過密な東京に就職しなくて済む」という人が増えよう。それどころか、各地からこうした政令指定都市を目指す人の流れもできるかもしれない。 人口減少社会に対応し得る政令指定都市を各地に存在させることは、その周辺都市を含めた「エリア全体」の活性化策を展開できるようになるということでもある。 いたずらに東京一極集中の是正を唱え続けて行っても、状況は何ら変わらない。そうこうしているうちに、日本全体の人口が激減して打つ手を無くしてしまう。地方創生を成功に導くには、「地方」がどこを指すのか早急に整理するところから始めることである。
河合 雅司(作家・ジャーナリスト)