政府が「地方創生」失敗を認めた…多くの人が知らない「東京一極集中」の本当の現実
「地方からの大学進学」の間違い
「東京一極集中が進むのは、地方から多くの若者が東京圏の大学に進学するためだ」というのもイメージ先行だ。 文部科学省の資料で、東京都に所在する大学に進学した人を出身高校の所在地別でみてみると、2023年度は72.3%が東京圏(1都3県)の高校出身者であった。大学の所在地を「東京圏」に拡大しても70.9%は東京圏の高校からの進学だ。 1都3県以外で東京都の大学に進学した人は4万2094人である。東京圏の大学で計算し直しても7万3381人である。その大半は政令指定都市の出身者とみられる。人口減少が著しい県では「18歳人口」自体が少なくなってしまっているためだ。 それでも「地方の大学進学者が東京一極集中の大きな要因」のように語られるのは、東京の大学に進学する人の絶対数の問題というより、大学卒業後に戻ってこない人が多く、そのことが過疎化の原因になっているからであろう。 だが、ここにも事実誤認が紛れ込んでいる。10代後半から20代の若者が故郷を離れるのは、東京の大学に進学した人とは限らない。実は、地元大学を含め、東京以外の大学に進学した人も就職時に東京圏に移り住んでいるのである。 これについては国交省が興味深い資料を紹介している。東京圏以外にキャンパスを構える大学の卒業生の就職先をみると、京阪神や北海道、東北、北関東にキャンバスのある大学の卒業者は25%以上が東京圏で就職しているのだ。九州は約20%、四国を除くその他の地域も15%以上である。東京圏の大学に進学してそのまま東京圏で就職する人に加え、就職時に東京圏へと移る若者が東京一極集中を加速させているということである。 政府は2018年に一極集中是正策として東京23区内にある大学の定員増を原則認めないことにした。これについては、当時から政策効果が期待できない「愚策」との批判が強かったが、こうした数字を見る限り批判は妥当だと言えよう。 さらに、多くの県は地元私立大学の公立化を進めてきた。地元大学への進学率を高めることで地域への定着率を高めようという地方創生策の一環だが、国交省の資料を見る限りこれも効果は限定的だといえそうである。