新聞・テレビはなぜ「役に立たない」と見なされるのか?選挙期間中にこそ高まる政治への関心、なのに報道は抑制的に
■ 「ネットで支持を集めた」と簡単には断言できない 「石丸現象」で強い関心を持たれた2024年東京都知事選の年代別投票率も明らかになっていないのである。 石丸氏の躍進から「SNS、特に動画」を重要視する向きは少なくないが、そもそも東京都知事選はSNSや動画も含めてネットではあまり発信「しなかった」現職の小池氏が石丸氏と比べてもダブルスコアで圧勝していることがすっかり看過されている。 むしろ東京都知事選については、ネット云々ではなく現職圧倒的有利(現職が出馬する場合、現職が勝利してきた)という経験的なセオリーが反復されたのである。 兵庫県知事選挙についても同様で、選挙前から斎藤氏に注目が集まっていたことから知名度が決定的に他候補と違ったという仮説なども排除(≒棄却)されていない。経験的に、選挙の業界では「悪名は無名に勝る」と言われてきた。 選挙の基本的な情報をおさらいしておこう。 兵庫県の有権者数は約450万人。兵庫県知事選最多の7人が立候補した。投票率は今回55.65%、前回41.10%だ。 そのうち今回、斎藤氏得票率45.25%(111万3911票)で、前回が46.9%(85万8782票)だ。斎藤氏の獲得票数は増えたが、得票率はむしろ下がっている。 ◎(2024年)【開票結果】兵庫県知事選 失職の斎藤前知事が2回目の当選 | NHK ◎(2021年)兵庫県知事選 | 地方選挙 | NHK なお斎藤氏は2位に敗れた稲村前尼崎市長の地元である尼崎を除く県内自治体で、他候補を上回っている。 ◎兵庫県選挙管理委員会「開票状況表」 そのことを踏まえると、都市型/地方型といった区分も難しく、ほとんどの自治体で他候補より支持を集めている。一般に、非都市部のほうが高齢化も進んでいるから、高齢層からも相当の支持を集めたものといえる。 また選挙の構図自体も有権者にきわめて不親切であった。というのも、冒頭述べたように、知事の不信任決議は全会一致で採択されている。自民党も、維新も不信任に賛成したはずである。 ところが、県議会で不信任に賛成した各党の一部が斎藤氏を支援したとされている。自民党は独自候補を出せず、公明党ともども自主投票となったし、維新は直近まで参議院議員を務めた候補者を担ぎ出したが、一部が斎藤氏を支援したようだ。 出口調査でも自民党支持層の半数弱、維新支持層の半数強、無党派層の半数強が斎藤氏を支持している。いったい不信任決議への賛成とはなんだったのだろうか。有権者が混乱してもおかしくはない。 ◎文書問題で混乱の兵庫 知事選の舞台裏 何が? 斎藤前知事が勝利 | NHK | WEB特集 ◎兵庫知事選の出口調査、斎藤県政「評価」7割…「SNS・動画投稿」参考の9割弱が前知事支持 : 読売新聞オンライン ここまでの簡単な検討だけでも「ネットで、若者の支持を集めた」仮説は棄却されるとまではいえないにせよ、そう簡単に断言できないように思えてこないだろうか。