グーグルも原子力発電を選択…AIによる電力需要増に備えて（海外）
生成AIはエネルギー業界に負担をかける
大手テック企業は、より賢いAIを構築しようと競い合っているが、これには大量のエネルギーを必要とする。 カイロス・パワーとの契約を発表したグーグルのエネルギー・気候事業担当シニアディレクター、マイケル・テレル（Michael Terrell）は、グーグルが現在多額の投資を行っているAI技術のエネルギー需要を支えるため、電力網は「新しい電力源を必要としている」と述べている。 グーグルは2024年の夏、AIの推進がいかにエネルギーを大量に消費してきたかを明らかにした。2024年7月に発表された同社の年次環境報告書によると、「データセンターのエネルギー消費とサプライチェーンの排出量の増加」によって、同社の2023年の排出量は前年比で13％増加したという。 巻末の注釈を除き、86ページに及ぶこの報告書は原子力発電について触れていない。グーグルのカイロス・パワーとの契約は、データセンターにクリーンな電力を供給するため、あらゆる選択肢を検討する準備が整ったことを示している。 このことは、グーグルのAIモデルである「Gemini（ジェミニ）」のよりスマートなバージョンを構築を目指す上で重要なことだ。ペンシルベニア大学ウォートン・スクールのイーサン・モリック（Ethan Mollick）教授はXに投稿し、この契約によって「2030年までに少なくともあと3世代（GPT-5以降）にわたり、AIモデルがスケールアップする可能性を高める」と主張している。 The Google deal to acquire small nuclear reactors to power data centers increases the odds that we will see AI models scale through at least 3 more generations/orders of magnitude (post GPT-5) to 2030.According to Epoch, power was the binding constraint. pic.twitter.com/lChspwoZjC — Ethan Mollick (@emollick) October 15, 2024 他の企業もこの事実を認識している。OpenAIが2022年後半にChatGPTを発表して以来、世界の大手テック企業は、生成AIで競争力を維持するためには膨大な量のクリーンエネルギーが必要だという問題に直面している。 ある推計によると、OpenAIのチャットボットでの検索リクエストは、一般的なグーグル検索の約10倍の電力が必要だという。その背後にある大規模言語モデル（LLM）は、データセンターのコンピューティングパワーを集中的に稼働させて明確な応答を生成する。 太陽光発電や風力発電はクリーンな発電手段ではあるが、テック業界の一部では、これだけではAIの需要を満たすには不十分だと指摘する声も出ている。 例えば、メタ（Meta）のチーフAIサイエンティストのヤン・ルカン（Yann LeCun）は、2024年9月、Xに投稿し、「AIデータセンターは原子力発電所の隣に建設される必要がある」と主張した。なぜならば、原子力発電所は連続的に「ギガワット規模で、低コスト、低排出の電力」を生産できるからだ。 「その利点は、高価で無駄な長距離配電インフラが必要ないことだ」と彼は投稿し、さらに太陽光や風力は「良い」ものだが、簡単でも安価でもないと付け加えた。
マイクロソフトの原子力についての動向
グーグルのライバルであるマイクロソフト（Microsoft）は2024年9月、ボルチモアに本社を置くエネルギー会社であるコンステレーション（Constellation）と20年間の電力供給契約を結び、スリーマイル島の原子力発電所を再稼働させる意向を示している。
Hasan Chowdhury
