鳥居で懸垂、放火容疑……日本文化を踏みにじる「傲慢インバウンド」 観光公害の末路? 他国軽視の背景とは
観光収入増加も地域に届かず
2023年、京都市の税収総額は3200億6000万円と過去最高を記録し、宿泊税収も前年度比で21億5300万円増加した。しかし、この増加額は意外にも小さい。 京都市の税務統計によると、2023年の産業構造では製造業が6割以上を占め、旅館料理店は全体のわずか 「1.4%」 に過ぎない。観光関連産業のサービス業を加えても、その割合は8.3%程度にとどまっている。これに対して、機械工業は18.3%、金融保険業は6.7%、不動産業は5.5%と、観光関連産業の占める割合は著しく低い。 一方、京都市の「京都観光総合調査」によると、2023年の観光消費額は1兆5366億円、経済波及効果は1兆7014億円にも達している。訪日観光客のひとり当たりの消費額は平均7万1661円と非常に高い水準にある。このギャップは、観光がもたらす経済効果が 「地域全体に均等に分配されていない」 ことを示している。膨大な経済波及効果が生まれているにもかかわらず、それが地域の税収や産業構造には十分に反映されていないのだ。 特に注目すべきは、観光消費額や経済波及効果に対する税収の少なさである。その一因として、利益の大部分が 「地域外に流出している」 ことが考えられる。例えば、多くの訪日観光客が海外のオンライン予約サイトを利用しており、これらのサイトは予約額の8~15%を手数料として徴収する。つまり、1泊2万円の宿泊料金のうち、最大で3000円が海外企業の収入となる。また、大手チェーンホテルや旅行会社では、利益のほとんどが東京などの本社所在地に移転されるため、地域に留まる利益が限られてしまう。このような仕組みにより、観光消費額の増加が 「地域の税収増加には直結しない」 という現実が存在しているのだ。
観光地としての限界と転換
この状況を直視すると、ひとつの大胆な解決策が浮かび上がる。それは、 「観光地としての京都」 という従来の路線から意図的に転換することだ。具体的には、訪日観光客の誘致に向けた予算や施策を段階的に削減していく。 ・多言語対応 ・観光案内所の整備 ・Wi-Fi環境の充実 といった「おもてなし」のためのインフラ投資を見直す。 この方針転換は、表面的には訪日観光客への不親切に見えるかもしれない。しかし、これは「消費される場所」としての京都から、 「文化を継承する場所」 としての京都へと変わることを意味する。利便性を意図的に低下させることで、「金を払えば何でもできる」と考える傲慢な訪日観光客の数を自然に抑制できるだろう。その結果、京都の文化や歴史に真摯な関心を持つ訪日観光客だけが訪れるようになり、京都本来の姿を取り戻すことができる。 一見すると極端な提案に思えるかもしれない。しかし、経済効果のほとんどが地域外に流出し、文化的な摩擦や環境負荷だけが地域に残る現状を考えれば、これは合理的な選択といえる。むしろ、表面的な経済効果に囚われて、無限に訪日観光客を誘致し続けることこそが非合理的ではないだろうか。 富裕層をターゲットにするのか、それとも観光地としての機能を縮小するのか、その選択は各地域の状況によって異なるだろう。しかし、もっと本質的な問いがある。それは、 「観光業に本当に未来があるのか」 ということだ。