選挙が相次ぐ欧州で新たな火種か トルコ閣僚の政治集会参加を独蘭が阻止
3月15日にオランダで行われる下院選挙を皮切りに、今年はフランスで大統領選挙が、ドイツでは連邦議会選挙が行われる。反移民や反EUを声高に主張する極右政党の台頭が懸念される中での選挙となるが、オランダ下院選挙では現時点で、極右政党の自由党が30席近くを獲得し、野党第一党となる可能性が高いと地元メディアは伝えている。 NATO(北大西洋条約機構)加盟国で将来のEU(欧州連合)入りを目指すトルコでは、4月に大統領の権限を強化する憲法改正をめぐって国民投票が実施される。国民投票には国外で暮らすトルコ人にも投票資格があるため、エルドアン政権は西ヨーロッパ各国の改憲支持集会に現役の閣僚を派遣し始めたが、ドイツやオランダはトルコの閣僚が集会に参加することに難色を示し、11日には空路でオランダ入りしようとしたトルコ外務相が入国を拒否された。怒り心頭のエルドアン政権はオランダに対して制裁措置の検討を開始した。
トルコで大統領の権限強化狙う改憲へ国民投票
トルコのチャブシオール外相は11日、オランダのロッテルダムで開かれたトルコ人の集会に参加するために空路でオランダに向かったが、チャブシオール外相を乗せた飛行機にオランダ当局は着陸許可を与えなかった。トルコでは大統領の権限強化といった内容を含んだ憲法改正を問う国民投票が来月16日に行われる予定で、ヨーロッパ各地では改憲を支持するトルコ人らによる集会がいくつも計画されている。 西ヨーロッパ諸国では「安全上の懸念」などを理由に集会の許可には消極的で、ドイツでは3月初めに国内2か所で計画されていた集会の許可が取り消された。これらの集会にはエルドアン政権の閣僚が参加し、改憲への支持を訴える予定であったとされている。オランダ政府も同様の理由でトルコ外相の空路での入国に許可を与えなかったのだが、同じ日に陸路でロッテルダムに入ったサヤン・カヤ家族担当大臣がトルコ領事館の手前でオランダ警察に阻止され、警察の護衛でドイツに移動させられている。 オランダ当局の対応に憤るエルドアン大統領は11日、オランダを「臆病なナチスの残党」と非難し、何らかの形で制裁を行う可能性を示唆した。エルドアン大統領は5日に行った演説でも、ドイツ国内での集会に許可を与えなかったドイツ政府に憤りを隠さず、「ドイツ政府はナチス時代と何も変わっていない」と支持者に訴えた。 ドイツのメルケル首相は9日、連邦議会で行った演説の中で、ドイツに住むトルコ人はドイツ社会の大切な一員であると前置きした上で、「トルコ国内の政治問題がドイツに持ち込まれることを防ぐために、我々はできる事全てをやる用意がある」と語っている。メルケル政権はエルドアン大統領の「ナチス発言」を静観する構えを見せているが、保守政党のCSU(キリスト教民主同盟)所属の議員からは「エルドアン大統領や彼の取り巻きは、はっきり言ってドイツでは歓迎されていない」といった発言もある。