プリキュアの“恋愛描写”は20年間でどう変わった? 「彼氏」すら表現できなかったプリキュアがわんぷりで「カップル誕生」を描けるまでに至った理由
恋愛を描くことはタブーだった?
プリキュアに「直接的な恋愛の物語」が少ない理由について、プリキュアの脚本を数多く手掛けている成田良美さんは、2013年刊行の書籍『プリキュアシンドローム』(幻冬舎)の中で、当時は保護者側から「恋愛は避けて欲しい」という反応があり、徐々に恋愛描写が薄まっていったことに言及しています。 成田 やはり視聴者が三、四歳の女の子なので、保護者の方たちからも「恋愛はちょっと……」という反応があり薄まった形です。私が小さい頃に見ていたアニメでは本気で恋愛をやっていたんですけど、いまはあまりないみたいですね。 幻冬舎『プリキュアシンドローム! “プリキュア5”の魂を生んだ25人』(P263) また成田さんは、恋愛を主軸とした「ハピネスチャージプリキュア!」(2014年)を手掛ける際にも、「プリキュアで恋愛を描くことはタブーになりつつあった」「恋愛エピソードは避けてほしいと言われる」こともあり、プリキュアで恋愛を描いて良いか何度も確認したことを、後にオフィシャルコンプリートブックの中で語っています。 成田 『プリキュア』は子どもが観るということもあって、恋愛を描くのはタブーになりつつありました。実際に脚本を担当するときも、恋愛のエピソードは避けてほしいと言われることもあるくらいで。ですが、今回は長峯さんが「やりましょう」と言ってくれたので、「ついていきます」という気持ちでしたね。ただ私自身が長く『プリキュア』に関わっていることもあって、「本当に書いていいんですか?」と何回も確認しました。 学研プラス『ハピネスチャージプリキュア! オフィシャルコンプリートブック』(P80) この「ハピネスチャージプリキュア!」はまさに「恋愛」を一つのテーマとした作品で、主人公の愛乃めぐみ(キュアラブリー)と神様ブルーと幼なじみの相楽誠司くんの三角関係が物語の主軸に置かれ、最終的には愛乃めぐみがブルーに失恋してしまいます。 「主人公プリキュアが失恋する」という衝撃的な展開は大きな話題となり、その後に相楽誠司くんと「ちょっとだけ良い関係に進展した」描写で最終回を迎えることになりました。 このように、一度は「恋愛」にチャレンジしたものの、以降の作品ではその反動なのか「恋愛」は大きくフィーチャーされることはなく、あくまで物語に華を添える程度の描写が続きます。