パリを沸かせたアスリート、表彰台で輝いた笑顔〈関西発 月イチ! SPORTS〉
躍動した剣士たち
フェンシングでも関西勢が躍動した。女子では和歌山市出身の東晟良(せら)選手(25)が個人、団体通して日本勢初メダルとなる銅メダル獲得に貢献。フルーレ団体の3位決定戦で鋭い剣さばきで得点を次々に奪い、1点差での勝利を引き寄せた。
金メダルを獲得した男子フルーレ団体で、最年少ながら決勝戦の最終第9試合を担うアンカーを務めたのは京都市出身の飯村一輝選手(20)。持ち前のスピードを生かして勝利に導き、個人でも4位に入った。次代のエースは「これからもフェンシング界を先導していきたい」と、4年後に向けた活躍を誓っている。
馬術の総合馬術団体では神戸市出身の北島隆三選手(38)が「初老ジャパン」の一員として銅メダル獲得の快挙に貢献した。(後藤静華)
「言い訳なし、限界なし」の障害者ダンスチーム
エッフェル塔を望むパリ五輪のブレイキン会場が選手のダンスに劣らず沸いた瞬間があった。試合の合間に登場した障害者チーム「イル・アビリティーズ」が踊り始めた時だ。
「言い訳なし、限界なし」を掲げる彼ら。代表格でブラジル出身のサミュエル・リマ選手(ダンサー名SAMUKA)は14歳の時、悪性腫瘍で右脚を付け根から失った。舞台では片脚で後方宙返りし、杖(つえ)を巧みに使って派手な回転技も繰り出した。
3月の国際大会では後のパリ五輪王者を破って優勝。脚を切断した当初「誰からも見えない存在になること」を願った彼は、ステージで脚光を浴びる存在となった。独創性が尊ばれる競技の象徴的存在として、五輪で初めて競技を目の当たりにした人の心もつかんでいた。
改めてリマ選手の「片脚の人も、片手だけ持っている人も、何もない人も関係ない。みんな違っていい」という言葉がストンと胸に落ちた。多様性を雄弁に語れる競技が次の五輪で外れるのは残念だが、今回残した足跡は小さくない。(井上敬雄)
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