米金利先高観が世界を揺らす、震源地はパウエル議長-各国にジレンマ
アジア通貨と株が軒並み安-ドル高と元安レート、勢い欠く中国成長で
以下、パウエル議長の発言を受けて世界が直面する課題をまとめた。
ラガルド総裁の決意
ラガルドECB総裁はインフレ鈍化に伴い、6月に利下げに踏み切る方針とみられる。実際にそうなれば、今回のサイクルにおいてユーロ圏は利下げ開始で主要国・地域の先陣を切る見通しだ。とはいえ、リスクがないわけではない。
ユーロ安が進めば、輸入インフレが上昇する恐れがある。原油価格が高騰している現在、重大な懸念だ。ラガルド総裁はECBは金融政策運営においてFRBから独立していると主張しているが、ECB当局者は世界の金融政策に多大な影響を及ぼす米国の動向をにらみながら慎重に行動するだろう。
ECB政策委員会メンバーのビルロワドガロー・フランス中銀総裁は16日、「大きな衝撃や予想外の事態がない限り、ECBは6月6日の次回会合で初回の利下げを決めるべきだ」と明言。「その後は、実際的で機敏な漸進的政策を支持していきたい。今年と来年は追加利下げが必要だろう。そのペースはデータが導く。本当の意味で会合ごとのアプローチとなる」と続けた。
ECBは6月に利下げ、年内と来年は追加利下げが続く-仏中銀総裁
円のリスク
円相場が今月、1990年以来の安値に沈んだことで、日本では利上げ圧力が高まりそうだ。最近のインフレおよび賃金データにより、7月までに利上げを実施する論拠はすでに強まりつつある。
JPモルガン・チェースのチーフエコノミスト、ブルース・カスマン氏は「緩和的な金融環境や政策の継続性に対する植田総裁のハト派的な支持は、円安に起因するインフレ圧力が政策対応を正当化し得るとの先の発言を曖昧にするものではない」との考えを示した。
人民元への圧力
中国ではそのようなインフレの心配はないが、中国の10年債利回りの米10年債利回りに対する上乗せ幅が過去最高に達したことで、継続的な人民元安への懸念が高まっている。中国人民銀行(中央銀行)は元の先安観が定着し、資本流出に拍車がかかる事態を防ぐため、絶え間ない闘いを余儀なくされている。