脱炭素運動を楽しめるのは金持ちだけ?ドイツの再エネ転換がなかなか進まない当然の理由
少しも意外ではないが、発電以外の脱炭素化はゆっくりとしか進んでいない。ドイツはまもなく、電気の半分を再生可能エネルギーから生み出すようになるものの、20年間の「エナギーヴェンデ」(編集部注/原子力と化石燃料からの脱却を図る、ドイツにおけるエネルギー革命)で、同国の1次エネルギー供給に占める化石燃料の割合は、約84%から78%に下がったにすぎない。 ドイツ人は、おおむね速度無制限のアウトバーン(高速道路)や頻繁な大陸間飛行を好むし、ドイツの諸産業は天然ガスと石油で稼働している。この国が過去20年間と同じ割合で進むと、2040年の化石燃料への依存率は依然として70%近い数字のままだろう。 では、途方もないコストをかけて再生可能エネルギーへの転換を進めてこなかった国々はどうなのか?日本がその最たる例だ。2000年には、日本の1次エネルギーの約83%が化石燃料由来だった。福島第1原子力発電所の事故後、原子力発電が停止し、再稼働も一部にとどまっており、燃料輸入の必要性が高まった結果、2019年には化石燃料への依存率は88%を超え、90%に迫っている! ● 化石燃料を他のエネルギーに 置き換えることは難しい また、アメリカは石炭への依存度を大幅に下げ、発電では天然ガスに切り替えたものの、1次エネルギー供給に化石燃料が占める割合は、同年には依然として80%だった。一方、中国での化石燃料の割合は2000年の93%から2019年には85%へと減少したが、この相対的な下落の間に、同国の化石燃料需要は3倍近く増えている。 21世紀の最初の20年間に世界の化石燃料の消費量が約45%増えたのは、中国の経済的な台頭が原因であり、広範にわたって多額の費用をかけて再生可能エネルギーの利用を拡大したのにもかかわらず、世界の1次エネルギー供給に占める化石燃料の割合が、87%から約84%へと、ほんのわずかしか減少しなかったのも同じ理由による。 世界の年間の化石炭素需要は、今では100億トン強に達する。これは、全人類を養う主食穀物の最近の年間収量と比べて5倍近い質量であり、世界の約80億の人が毎年飲む水の総質量の2倍を超える。だから、それほどの量の化石炭素を別のものに置き換える事業は、末尾が0か5の年に定めた政府目標(編集部注/温暖化対策を叫ぶ知識人や政治家は、「2025年までに~」「2030年までに~」「2050年までに~」という表現を好む)で対応するのが最善ではないことは明らかなはずだ。