アメリカのZ世代の投票がトランプ復活阻止の鍵? 日本より選挙資金の透明性がないアメリカの若者にとっての大統領選挙
Z世代のための、Z世代による活動
次に支部の活動内容について説明してもらった。支部は州内の大学生や高校生で構成され、メンバーは70人ほどだという。 支部の中は、チームに分かれている。コミュニケーションチームはソーシャルメディアでの発信を担当し、新聞への寄稿なども行う。政治チームは、選挙の候補者の中から推薦する人物を選び、その候補者の選挙運動に参加する。 電話や携帯電話のショートメッセージで陣営への寄付を求めたり、戸別訪問で支持を呼びかけたり、候補者の名前が書かれた看板を掲示したり、活動内容はさまざまだ。実働部隊として動いてくれるのだから、陣営としてはありがたい存在だろう。 一方、政策チームは、若い世代にとって必要な政策を考え、それを実現するための法案まで書くという。例えば、彼らは若い世代の投票率を高めたいという問題意識を持っているので、高校での授業に主権者教育を取り入れることを実現する法案などを起草しているそうだ。 そして、彼女たちが強調していたのが、取り組みは若い世代のためであり、活動しているのも若い世代という点だった。 彼らが取り上げるテーマは、銃規制、医療・健康、ホームレスの人々の増加などを招いている家賃高騰、気候変動、持続可能な社会の実現など多岐にわたる。 ジャワーさんは、「若い世代は、さまざまな社会問題の中で育ってきました。その度合いは上の世代よりも深いのです」と、Z世代のニーズに焦点を当てることの重要性を強調する。 そして、自分たちはプログレッシブだという。プログレッシブの定義を聞いてみると、トランさんは、「保守派は伝統主義に根差しています。これに対して、プログレッシブは、物事を前に進めて、良い方向に変えたいという意味です。そして、それは特にZ世代の考えを反映していると言えるのです」と説明してくれた。
アメリカは保守化、右傾化が最も進んでいる
彼女たちがZ世代という言葉を強調するので、団体としては、具体的にどの年齢層をターゲットにしているのかを聞いたら、基本的には1997年生まれ以降とのことだった。団体は、特定の政党を支持しない、いわゆるノンパーティザンであるが、自分たちが求める政策の実現可能性などを考えて選挙で推薦する候補者を決める際には、結果として、民主党の候補者が多いという。 アメリカの若者たちの中には、彼女たちが熱く語るようにプログレッシブであることを求める若者も多いが、保守派の若者たちの活動も目立っている。若い世代での分断について、2人はどう認識しているのだろうか。ジャワーさんは、こう切り出した。 「アメリカは、他の民主主義の先進国と比べて、保守化、右傾化が最も進んでいると思います。アメリカでは、よりリベラルとされている政治家であっても、アメリカ以外の国に行けば、保守というカテゴリーの中に含まれるかもしれません」 かつての保守は、中道寄りから、今でいうところの極右までウイングが広かったものの、現在の共和党を見てみると、中道寄りではすぐに大統領候補になりえる政治家は存在せず、まるでトランプ前大統領を支持する極右のための政党のようになっていて、かつてよりも重心が右に動いたという認識だ。 ジャワーさんは、支部の活動を行う中で遭遇したある出来事を話してくれた。カリフォルニア州の州都サクラメントで、仲間と一緒に銃規制強化の活動をしていたところ、右派の人たちと偶然出くわしたという。 彼らは、自分たちと言葉を交わそうとはせず、一方的に活動を妨害してくるような感じだったそうだ。プログレッシブであることは、別に保守を否定することではないし、両者の対話は可能だと常々考えているジャワーさんにとっては、ショックな出来事だった。