アメリカのZ世代の投票がトランプ復活阻止の鍵? 日本より選挙資金の透明性がないアメリカの若者にとっての大統領選挙
彼らは常に投票に行く
保守派の拡大に強い懸念を持っていることは理解できたが、それに対抗するための戦略はどう考えているのだろうか。ジャワーさんからの回答は明快なものだった。 「彼らは、小さなポケットの中のような狭いところで生きています。しかし、全米で大きな影響力を持っています。なぜなら、彼らは常に投票に行くからです。そして、トランプ氏のような人を支えているのです。 彼らがアメリカという国を代表しているわけではありません。単に他のグループの人たちよりも投票に行くというだけです。ですから、私たちのゴールは、極右の運動を支持しない人々に動いてもらうことなのです。ある意味、昔ながらの手法です」 また、トランさんは、「ターニング・ポイント・USA」のような保守派団体の活動が目立つのは、メディアには視聴者や読者が興味を持ちそうなことから取り上げる傾向があることも理由の1つであり、それでは彼らの思うつぼだと考えている。そして、トランさんも、筆者と同様に、巨額の資金がどこに、どう流れているのかに関心を持っていた。 「結局のところ、アメリカでは悲しいことに、選挙資金の透明性がないのです。いわば政治屋のような人たちが、特にロビー団体とどういうことで合意しているのかがまったく見えないのです。連邦レベルでも、それ以外のレベルでも、腐敗をなくし、透明性を確保することが、違った考えを持つグループ同士の歩み寄りを促すことにつながるかもしれないと考えています」 トランさんは、2024年の大統領選挙でトランプ氏が返り咲く可能性があると考えている。それは、「トランプ氏は、白人の不満を武器にする能力がとても高い」と見ているからだ。 一方で、楽観できる材料もあると考えている。それは2022年の中間選挙の結果だ。当初は共和党の圧勝、いわゆる「レッド・ウェーブ」が予測されていたが、共和党の勝利はそれほどではなく、トランさんは、Z世代が投票に行って、波を食い止めたからだと受け止めている。 予定していた1時間はあっという間に過ぎた。支局があるビルの駐車場には、トランさんの父親が、カリフォルニア州でも人気のテスラの電気自動車で2人を迎えに来ていた。 年齢は筆者とあまり変わらないようだ。彼女たちの活動は、2人の情熱が原動力なのはもちろんだろうが、きっと親も懸命に応援していて、それも支えになっているのだろう。車が駐車場から出ていく様子を見ながら、そんなことを考えた。
---------- 及川順(おいかわ じゅん) 1971年生まれ。東京大学経済学部卒業。1994年NHKに記者として入局。国内政治、アメリカ政治を中心に取材。報道局政治部、アメリカ総局(ニューヨーク)などを経て2019年からロサンゼルス支局長。2023年から沖縄放送局コンテンツセンター長。2010年、国連記者協会賞受賞。著書は『非科学主義信仰 揺れるアメリカ社会の現場から』(集英社新書)。 ----------
及川順