なぜ織田記念の男子100mで山縣亮太が復活Vを果たせたのか…東京五輪代表争いが激化へ
「宮崎から織田記念までは、質の高い練習を効率的に積むことが課題でした。同じ60mダッシュでも、100%、120%の力を出すようなトレーニングをしてきたんです。これまでも『全力を出すぞ』と思いながら、力を出し切れていなかった可能性がある。気持ちの壁を取っ払ってやってきました」 メンタル的にも吹っ切れた山縣は持ち味である前半のキレが復活。織田記念では横綱レースを見せつけた。しかし、東京五輪への道は決して平坦とはいえない。 個人種目は各国最大「3枠」ですでにサニブラウン、桐生、小池の3人が参加標準記録(10秒05)を突破しており、”先行”されているからだ。さらに2016年の日本選手権王者で、昨季10秒03をマークしているケンブリッジ飛鳥(27、ナイキ)という強敵もいる。山縣は参加標準記録をクリアしたうえで、6月下旬の日本選手権で「3位以内」に入らないと3度目の五輪キップを手にすることができない。 それでも山縣は、「スタートからレースを引っ張っていく展開が自分の強み。その点は非常に良かったかなと思っています。ただ決勝のレースはスタブロから出て、10mあたりでもたついた部分がありました。もう少しいい流れを作ることができれば、記録はもっと狙っていける。身体ももっと仕上がっていくと思いますし、東京五輪の参加標準記録は十分射程圏内に入っているなと感じています」と自信を口にした。 山懸の復活Vは東京五輪でメダルの期待が高い男子4×100mリレーを考えても明るい材料だ。同時に、それはリレー代表争いも熾烈を極めることを意味している。 では、ライバルたちの現状はどうなのか。織田記念は2位が小池で10秒26、3位が桐生で10秒30だった。
予選と決勝でスパイクを変えた小池は、「予選の感じで出たので、スパイクの引っ掛かりが良くなかった」と序盤で出遅れたが、中盤で立て直して2位を確保。「第一目標は達成したので一歩前進かな」という感想を持っている。 桐生は3月の日本室内選手権60mで左膝裏を痛めて、4月11日の出雲陸上を欠場。織田記念が今季屋外初戦だった。 「決勝はスタートでミスしましたし、スピード練習が足りていなかったですね」と話していた。 仕上がりは少し遅れているが、すでに東京五輪の参加標準記録を突破しているため、日本選手権に向けて合わせていけばいい。 5月9日の五輪テストイベント「READY STEADY TOKYO」には桐生、小池、ケンブリッジ、多田らが出場予定。今度はどんなドラマが待っているのか。 さらに6月下旬の日本選手権、今夏の東京五輪と日本人スプリンターのハイレベルな戦いは続いていく。オリンピックでは男子100mのファイナル進出とメダル挑戦。それから男子4×100mリレーの熱狂を楽しみにしたい。 (文責・酒井政人/スポーツライター)