人生の「道の曲がり角」で読みたいモンゴメリ『赤毛のアン』シリーズ
アン・シリーズはスコットランド系カナダ人の小説
モンゴメリは、祖先が18世紀にスコットランドから来たスコットランド系カナダ人です。 そのため、アン・シリーズの登場人物はほとんどがスコットランド系で、一部に北アイルランド系、ウェールズ系もいます。アン・シリーズは、おもにスコットランド系のカナダ人を描いた英語文学です。
『赤毛のアン』カスバート家、アン、同級生たち
グリーン・ゲイブルズのカスバート家は、マシューの母がスコットランドから白いスコッチローズをもってカナダに渡ってきたと書かれています(第37章)。一家の信仰は、スコットランドの宗教改革によって誕生したプロテスタントの長老派教会です(第25章)。そこでカスバート家はスコットランド系です。 カスバートという名字は、モンゴメリの親族にもいますが、一般には7世紀イギリスのケルト的な初期キリスト教の聖人、聖カスバート(634頃~687)が有名です。
主人公のアンは、ノヴァ・スコシア(新スコットランド)の生まれ育ちで(第5章)、スコットランド民族の伝統的な帽子のタモシャンター(第19章)と、スコットランドの乙女が未婚の印に頭にまいたリボンのスヌード(第27、28章)を身につけています。 アンは、マリラが台所の窓辺においてハーブとして使う林檎香(アップルセンテッド)ゼラニウムを、スコットランド語で「ボニー」(意味は良い、美しい)と名づけます。また18世紀にインクランドに併合されて王国を失ったスコットランドの悲劇的な歴史の詩、たとえば16世紀にスコットランドがイングランドと戦って、スコットランド国王ジェイムズ4世をはじめ1万人以上が戦死して大敗を喫(きっ)したフロッデンの戦いの詩、イングランドに幽閉されて処刑されたスコットランド女王メアリの詩を愛誦することなどからも、アンはスコットランド系とわかります。 アヴォンリー校の同級生では、善良な優等生ジェーン・アンドリューズは、アンドリューズがスコットランドの守護聖人(聖アンドリュー)の名前、金髪碧眼(へきがん)の美少女ルビー・ギリスのギリスは、ゲール語由来のスコットランド人の名字です。さらに二人は長老派教会の信者ですから、スコットランド系です。
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