異端化する「右派ポピュリズム」とリベラリズムの反撃――ウクライナ侵攻の「思想地政学」
ウクライナ侵攻で再認識された「ロシアの反自由主義工作」
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アメリカのドナルド・トランプ前大統領は、2月24日の ウクライナ 本格侵攻直前までロシア軍による同国包囲作戦をとるウラジーミル・プーチン大統領を 「賢い、天才的だ」と褒めそやしてきた 。そのため、侵攻開始後、批判のやり玉に挙がっている。トランプだけでない。保守系ケーブルテレビFOXニュースの人気キャスター、タッカー・カールソンや、ラストベルト(錆び付いた工業地帯)の白人貧困層の生活を描き邦訳も出て評判となったJ・D・バンスらトランプ派の論客らも、同様にプーチン讃美が批判の的となった。 トランプを筆頭にカールソン、バンスも2024年大統領選挙共和党候補選びへの出馬の観測があり、バンスは一足先に今秋の中間選挙で上院議員(オハイオ州)を目指し出馬している。だが、プーチン称賛やウクライナ批判発言が、「孤立主義」などを掲げナショナリスト・ポピュリズム(国民主義ポピュリズム)の波に乗って登場したトランプら新しい右派の今後の選挙戦略にとって障害になりかねない。 代わって、勢いづいているのは、新しい右派の運動からはじき出されていた ネオコン (新保守主義者)知識人らだ。ネオコン系やネオコンと思想が近いリベラル・ホーク(タカ派)といわれる米主要紙のコラムニストらがロシアのウクライナ侵攻を非難し、返す刀で親プーチン姿勢をとってきたトランプらを厳しく断罪し、気炎を吐いている。冷戦後のネオコン思想に大きな影響を与えた『歴史の終わり』の著者 フランシス・フクヤマ は、ウクライナ侵攻でロシアが敗れれば、世界の民主主義は後退期を抜けだし、「自由の再生」が起きて「1989年精神が生き延びる」と予想している。自由主義にとって正念場だということだ [1] 。
本文:7,453文字
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会田弘継