<報ステ騒動>江川紹子・青木理が語るコメンテーター論
青木理 「権力の監視をすれば、トラブルに見舞われるというムードが強まることを危惧する」
ーー古賀氏の件、印象は? 青木理:僕は、古賀さんがどんな力学で下ろされたのかは知らないから、古賀さんがいいとか悪いとか、テレ朝がいいとか悪いとかいう資格はないし、言うつもりもないんだけど、基本的に、楽屋の話でしょう。それを放送でいうのは、カッコが良くないし、見ている人も気分が良くないものだと思いますね。 ーー青木さんは、テレビ朝日の「モーニングバード」、読売テレビの「ミヤネ屋」などでのコメンテーターをやられています。コメンテーターの役割とは? 青木:ワイドショーのような情報番組で、タレント、芸能人、お笑いの人がコメンテーターとして出演してコメントするというのは、世界的に見ても珍しいことでしょう。僕はジャーナリストとして、社会部系のことを取材をしてきたり、海外で特派員をしてきたので、「青木理」として番組に出ているのではなく、「ジャーナリスト」として出ているわけで、見ている人もスタッフも、僕に対しては、それを期待している。 だから、僕は取材をした事実に基づいて物を言う。最近の例でいえば、川崎でおきた少年事件。たしかに、陰惨な、悲惨な事件だけど、ああいう事件のニュースを流すと、司会者やコメンテーターの人たちが、「最近、こんな事件が増えている」とか、「少年事件は凶悪化していますね」と言ってしまいがちですよね。それに対して、僕は、ジャーナリストとして少年事件を何件も取材しているので、事実として少年事件は増えていないし、凶悪化もしていない、ということをきちんと言えるんです。例えば、ラジオ番組でこういう事を言うと、番組にけっこう抗議がくるので、その意味では言わない方がいいわけだけど、事実と違うのだから、僕の判断でジャーナリストとして、きちんと言う。それが(ジャーナリストとしてコメントする)僕の役割なんです。
ーー政権の圧力で、メディアが自粛しているという指摘については? 青木:この数年、安倍政権のメディア政策、メディアに対する態度のせいで、メディアのなかに萎縮、自粛が強まっているのは間違いない。 メディアの役割とは何かといえば、権力の監視でしょう。それはしんどいわけですよ。やれば、トラブルが起きる可能性が強まる。実際に、テレビ朝日の「報道ステーション」はそれをやってトラブルが起きた。逆に、まったくトラブルが起きていないニュース番組もあるわけ。そういう番組は権力の監視をしていないんですよ。それに対して、全然不十分だけれども、かろうじて権力の監視役を果たそうとしてるテレビ朝日の「報道ステーション」やTBSの「ニュース23」や「報道特集」、なんていう番組には、陰に陽に、いろんな圧力がかかるわけですよ。古賀さんが言うように、菅さんから直接に圧力がかかったかは知らないけれども、少なくとも、そんな直接的な圧力ばかりではないでしょう。例えば、文化人を通して間接的に圧力がかかったり、「今の政権は怒ると何をするかわからない」というムードがあるなかで、現場の人が忖度して企画を止める、ということだってある。いろんなレベルでメディアに対する圧力と、萎縮が起きている。