<報ステ騒動>江川紹子・青木理が語るコメンテーター論
ーーTVコメンテーターの役割とは? 江川:人が考える材料を提供することだと思います。例えば、局が作るVTRがあるわけですけど、それだけではわからない背景、事情や、どういう流れでこれが起きたのかについて、自分の知識や経験でおぎなう「情報」を提供することがひとつ。そして、ニュースをどう見るかという「視点」を提供することがもうひとつです。いずれも、コメントを受け取った側が、それをきっかけとして、自分たちが考える材料とするためです。「考えさせてくれるコメント」が求められるのだと思います。 ーー古賀氏は、「報道機関が政権側の圧力で自粛している」という指摘をしています。コメンテーターの役割の一つ、多様な「視点」を提供する上で、そうした状況は問題にはなりませんか? 江川:番組で語ることを、コメンテーターが決めていいのか、という問題があります。「番組に何年か出演されてきた上での感想をお願いします」という質問であれば、あのやりとりはあっていいと思います。ただ、番組内で、「この時間帯は、このニュースを伝える」ということは、番組が決めるわけです。でも、古賀さんの場合は、話題を変えてしまった。決められた話題を無視して、自分が言いたいことを言うのは、行き過ぎだと思いますね。 古賀さんは、非常に切羽詰まった気持ちだったのかもしれませんが……。「テレビ朝日の会長等の力によって降板させられた」ということが、本当に事実なのかは、私にはわからない。 テレビ朝日と古賀さん。どちらが正しいのか、ということを考えずに、古賀さんの言うことが事実であると言ってしまうのはどうか。やはり、「事実」、「推測」、「意見」を分けて考えなくてはいけない。「考える材料を提供する」というTVコメンテーターの役割から言えば、「これは裏打ちのある事実です」、「これは幾つかの事柄に基づいて私が推測していることです」、「それに対する私の意見です」という形で説明しないと、番組の受け手を混乱させますよね。 実際に、今回の騒動をどう見たらいいのかについて、混乱が起きています。テレビ朝日が言うように、古賀さんがレギュラーではなく、常連のコメンテーターに過ぎないのであれば、番組をリフレッシュするために入れ替えはあるわけで、4月はまさにそういう時期です。 それとも、官邸が古賀さんを「狙い撃ち」して降板させたのか。官邸がそのように重要人物として古賀さんを評価しているのかどうか。それもわからない。よくわからないのに、古賀さんが話した事が「事実」として広がり、混乱がおき、うまく判断ができないという状況に陥っているのではないでしょうか。