「夏祭りすら十分に楽しませてあげられない…」シングルマザーの“悲痛な叫び” 深刻すぎる「体験格差」の実態
貧困と孤立の中…シングルマザー家庭における「体験格差」実態
放課後の習い事や、休日の旅行などといった、子供たちが学校以外で得られるあらゆる“体験”ですが、それが得られる子どもとそうでない子どもがいます。そのような子ども達の“体験格差”がいま、現代社会の新しい課題として話題になっているのをご存じでしょうか? 【あわせて読みたい】「突然正座になって、泣きながら『サッカーがしたいです』と…」シングルマザーが痛感した“子どもの体験格差”の厳しい現実 体験格差は家庭の収入や、住んでいる地域など、様々な要因から生じてきます。 そこで今回は今井雄介さんの著書『体験格差』をご紹介。子どもを2人もつシングルマザー家庭の事例に焦点を当て、ひとり親家庭における子どもの体験格差の実態に迫りたいと思います。
習い事に通わせる余裕はない
【池崎愛子(いけざき・あいこ)さん 長男(小学生)・次男(小学生)】 池崎愛子さんはデイケアで看護師として働いている。二人の子どもがまだ4歳と2歳だった頃、夫の暴力や夜遊びなどが原因で離婚を経験した。 ―離婚をされたことで、経済的な面での変化はありましたか。 夫がいた頃も給料は入れてくれていませんでした。光熱費だけは口座振替で落ちていたんですが、貯蓄をするのは難しかったです。 ―離婚以前から収入としては母子家庭に近い状態で。 そうですね。夫とは次男を妊娠している頃から仲が悪くなり、出産後しばらくしてからは家庭内別居のような感じになりました。 彼は食事だけして別の部屋にこもっていました。それで、夜は週4ぐらい遊びに行って、夜中の2時とか3時に帰ってくるという。その回数があまりに多いので改めてほしいという話をしたら喧嘩になって。子どもと家を出て、数日後に戻ったら別の女性がいました。 子どもの目の前で自分を蹴るとかもありました。次男はそのことを覚えていて、今でも時々その話をするんです。まだ次男が赤ちゃんだった頃に、泣いている次男を夫がソファーの上にボンと落とす、みたいなこともありました。 ―暴力や虐待も受けていたんですね。 私は看護師をしているのですが、看護師は「夜勤してなんぼ」というのがあります。次男の出産後は子育てや保育園の送迎のため日勤の仕事に就いたので、給料が下がりました。 以前は30万円近いときもありましたが、今は手取りで19万円ぐらいです。日曜祝日も働けなくなりましたから給料のほかには就学援助を受けていて、あとは児童手当と児童扶養手当ですね。学童の費用も二人で月8000円くらいまで抑えてもらっています。 養育費はもらえていません。彼が出て行ってすぐの頃は、子どもの誕生日のプレゼントがポストに入っていたり、「来週子どもを動物園に連れていくから」という連絡がいきなり来たりすることもありました。でも、その1、2年後からはまったく音信不通の状態です。 ―お子さんたちはお金のかかる習い事などに参加したことがありますか。 ないですね。お金もそうですし、送迎も難しくて。車は元の夫が持っていってしまいました。私が子ども二人を自転車の前と後ろに乗せて行けるところだけ。あとはバスとか電車で遊びに連れていったり。 夜6時頃、学校で地区の夏祭りがあったときに、仕事が遅くなって一緒に行ってあげられませんでした。子どもたちそれぞれに500円ずつ渡したんですけど、二人ともめだか釣りを1回やっただけでなくなってしまったみたいで。今はそういうのも高いんですね。 あとはほかの子が色々やっているのを見ていたって。 長男が学童で将棋を習って好きになったんです。そしたら、ファミリーサポートの方が「公民館で年間500円だけ払ったら将棋ができますよ」と教えてくれて。それで、今は3人で月に2回、バスで20分くらいの場所にある公民館まで行っています。日曜日の午前中です。地域のおじいちゃんが子どもたちに将棋を教えてくれています。 私がなかなか勉強を教えられないので、タブレットでできる通信教育みたいなものには入りました。仕事から帰って、急いでご飯をだーっとつくって、子どもに食べさせて、お風呂に入れて、寝かせてっていう、そういう毎日で。 離婚をして、子どもたちに申し訳ない気持ちがずっとありました。通信教育は月に4000円くらいです。普段の生活を切り詰めながら、ちょっと奮発して払っています。ただ、二人分は経済的にキツいので、長男だけになってしまっています。