「夏祭りすら十分に楽しませてあげられない…」シングルマザーの“悲痛な叫び” 深刻すぎる「体験格差」の実態
もし私が「普通の親」だったら…
―勉強のほうはどうですか。 二人とも国語が得意ではなくて。特に下の子がもう2年生なのにまだカタカナもよくわからないんです。漢字はもう全然で。学校の先生にも相談したんですけど、障害があるのかもしれません。それぐらい書いたり読んだりというのが苦手です。 「普通の親」だったら、勉強をずっと見てあげたりとか、どこかに通わせたりとかができるかもしれないですが、なかなかできなくて。 ―子どもたちから「こんなことをやってみたい」と言われたことはありますか。 我慢してるのかなと思います。学校からサッカーとか野球のチームのチラシが配られるんですけど、「やりたい?」と聞くと、「いいよ、やりたくない」って言うんです。「テレビで見るのが好きだから」って。チラシに料金も書いてあるので、それが理由かなと思ったり。 二人とも勉強は苦手だけど、体を動かすことは好きなので、スポーツをやったらきっといいんだろうなと思います。クラスでやっている子もいるみたいです。 イオンに行くとキャンプのテントが売っていて、すごくやりたいのがわかるんです。わーってテンションが上がって、テントの中に入ったりして。でも「キャンプに行きたい」とは言わないです。買い物に行っても、「これ高いね、こっちがいいね」とか言ったり。 何かほしいものがあったとしても、まず母親がどう思うかなというのを先に考えて、その範囲で言ってくるようなところがあります。子どもらしくないというか。 ―キャンプに行ったり遠出したりという経験はほとんどないですか。 ないですね。旅行もまったく行っていないです。長男が学校の行事で山の学校に行ったぐらいです。 元々私は他県の出身なんですけど、両親は結婚前に他界しているので、息子たちにとっては「田舎に行く」という機会もなくて。田舎暮らしとか、キャンプとか、そういう体験をさせてあげられていません。 お友達に頼んで行けたりすればいいんですけど、必死で仕事をしているとママ友をつくる余裕もなかったり……。 キャンプ場とか、父親を交えて家族で何かするような場所を避けている部分もあります。 離婚の前に乗っていたのと同じ色の車を見ると、子どもたちが「あ、パパの車だ!」って言って手を振ったこともありました。 次回、池崎さんの“切実な願い”を聞いた――。
〈著者プロフィール〉今井 悠介
公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン代表理事。1986年生まれ。兵庫県出身。小学生のときに阪神・淡路大震災を経験。学生時代、NPO法人ブレーンヒューマニティーで不登校の子どもの支援や体験活動に携わる。公文教育研究会を経て、東日本大震災を契機に2011年チャンス・フォー・チルドレン設立。6000人以上の生活困窮家庭の子どもの学びを支援。2021年より体験格差解消を目指し「子どもの体験奨学金事業」を立ち上げ、全国展開。本書が初の単著となる。
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