酷暑の戦いとなった第101回箱根駅伝予選会…最後の1枠を獲得した順大と東農大、東海大「ボーダーライン」付近の争い
(スポーツライター:酒井 政人) ■ 東海大がラスト10mで急降下 第101回箱根駅伝予選会、気温が25度近くまで上昇した酷暑のレースに苦戦する大学が多発。通過水準が下がり、ボーダーライン付近の争いは最後まで混迷を極めた。 【写真】2024年5月3日、日本選手権の男子10000mで3位に輝いた東農大の前田和摩 17.4km通過時では8位の東海大と9位の東京国際大はそれぞれ2分47秒と2分23秒のアドバンテージがあり、順当なら通過は濃厚な状況だった。一方で10位順大と11位神奈川大の差はわずか3秒。12位の東農大もボーダーラインまで11秒差、13位の国士大は22秒差、14位の明大は1分00秒差につけていた。 このなかで脱落したのが東海大だ。第95回大会の優勝校に“ゴール直前”の悲劇が待っていた。チーム10番目を走っていたロホマン・シュモン(3年)がフィニッシュラインの10m手前でまさかの途中棄権。次の選手もなかなか姿を見せず、11時間03分39秒の14位で落選した。 西出仁明ヘッドコーチによると、ロホマンの調子は良く、スタート前の状態はいつも通りだったという。 「ずっと暑くなる予報だったので、その準備はして来たつもりでした。集団走のグループはキロ3分03秒で行く予定を3分05秒に落としたんです。ただ早々に集団から離れていく選手がいたので、ロホマンは自分がやらないとダメだという意識が強かったように感じましたね。それが最後に熱ケイレンというかたちで出てしまったのかもしれません……」(西出ヘッドコーチ) 他大学も想像以上の酷暑に大苦戦した。神奈川大はエース格の宮本陽叶(3年)が15km以降で途中棄権。10番目にゴールした中野蒼心(3年)も脱水症状で一時走るのを中断したという。それでも神奈川大は10時間59分12秒で9位通過した。
■ 最後の1枠は順大が獲得 最後の1枠に滑り込んだのが順大だ。合計タイムは11時間01分25秒で総合10位。東海大の“失速”に救われるかたちになったが、14年連続66回目の出場をつかんだ。 レース後、長門俊介駅伝監督は大量の汗をかきながら、苦しいレースを振り返った。 「浅井と吉岡でうまく流れに乗って、合計10時間50分ぐらいではと思っていたので、タイムは相当遅くなっています。見ている方も暑かったですし、走っている選手はもの凄かったのかな、と。集団走の7人は前日に5km15分15秒ペースと言っていたんですけど、15分20秒に下げました。1時間05分00秒以内で行きたいと考えていましたが、難しかったですね」 期待の吉岡大翔(2年)が98位(1時間05分53秒)と苦戦して、チーム7~10番目は1時間07分台と設定タイムを大幅にオーバーした。それでも故障上がりのエース浅井皓貴(4年)が14位(1時間03分49秒)と奮起したのが大きかった。 「浅井はケガをしていましたが、さすがですね。8月中旬から走り出してよくここまで戻ってきてくれたなと思います。彼は前回の箱根駅伝2区(区間19位)で後れを取った悔しさを常に持ってやってくれました。全日本選考会も苦しかったですけど、それはエースがいなかったのが影響したのかなと思っています」(長門監督) 前回の箱根駅伝は総合17位に沈み、三浦龍司(現・SUBARU)ら出場者5人が卒業。新チームは、「自信を取り戻すことから始めた」が、浅井を欠いた6月の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会は17位と惨敗した。「正直、積み上げてきたものが崩れかけた」が、秋の立川決戦をどうにか突破して、希望をつないだ。 「感情が複雑すぎて自分でもよくわからない。ホッとした部分が一番ですかね。いや、割合でいうと悔しさが6割かもしれない」 涙の理由を聞かれた長門監督はこう答えたが、本戦への手応えもつかんでいる。 「今の順天堂はまだ発展途上の状況なので、その力を披露できるのは箱根駅伝の時期になってからかなと思います。今回は守ってレースを進めているので、本戦につながるレースかというと、そうではない部分が大きい。吉岡は今回しんどかったですけど、ひとりで押していく力はあるので箱根の方が生きてくる。駅伝の方が力を発揮できる選手が多いので、本戦ではシード権だけでなく、『5位以内』を狙いながら戦っていきたい」 第101回大会は20番目のチームとして出場する順大だが、今年度のスローガンである『下克上』を正月決戦で実現させるつもりだ。