大河ドラマ「光る君へ」で藤原道長役の柄本佑「道長はパパです」
――道長の「民のためのよき政」という考えに対して、父・兼家(段田安則)の「政とは家だ」という考えは対照的ですが、道長の行動は兼家と同じように思えます。 「言葉にするのは非常に難しいんですけど、道長の気持ちは分かる気がするんです。兼家と同じことはしたくないという思いと、結果として同じようなことをしてしまった、ということの整合性をどう保つかだと思っていて。根は非常に深いので、正直なところ全ての撮影が終わってみないと答えは出ないですね。今は『同じことをしていても気持ちが違う』という感覚です」
――複雑な心境ですね…。 「台本のト書きに、(政治の心得を説く兼家に対し)“共感しないが圧倒される”と書いてありましたので、兼家の考えとのはざまで悩むことはなかったんですけどね。民のために動き、民のためによき政をするために、兼家と同じことをしてしまう。でも、兼家は自分の家のためなんですよね。僕は『出発点の違い』と捉えて演じています。僕自身も、まだまだ“道長の旅路”の途中なので、撮影が終盤に近づくにつれて見えてくるものがあるのかなと。とても楽しみにしています。今は『気持ちの違い』と思っています」
――一条天皇に対するアプローチも兼家とは違いますよね。兼家は圧をかけるような言動でしたが、道長は何度も辞表を出したり、清少納言の「枕草子」にまひろの物語をぶつけようとしました。 「道長は相手によって表情や言動が変わるようなキャラクター設定なんですよね。だから、一条天皇に回りくどいのも、道長流の人との付き合い方なんです。それに、今よりも今後のことを考えて行動しているように感じます」 ――「道長は一条天皇のことを緻密に考えてくれるので信頼している」と塩野さんがおっしゃっていました。 「強い信頼関係を感じます。一条天皇の行動に心配して進言することもありますけど、道長も一条天皇のことを信頼しています」
吉高さんは道長の演技を引き出してくれる
――まひろ役の吉高さんとは、逢瀬を重ねる場面などエモーショナルなシーンが印象的でした。吉高さんとの演技はいかがですか。 「吉高さんは懐が深いです。まひろとは、長くて強度の高いシーンが度々あります。セリフや台本のト書きに対して『こういう表情をされるんだ』という新たな発見があって。『だったら、道長はこういう表情になるかな』と導かれます。脚本の大石静さんのト書きをさらに具体的に示してくれているようで。吉高さんの演技に引き出していただいている部分も非常に大きいです」