売上3.8倍で今1番“アツい”Bリーグ、島田チェアマンに聞いた「絶好調の秘訣」とは
MIXIやセガサミーなど大手企業が“続々”参入
島田氏は、経営破綻寸前にまで追い込まれた千葉ジェッツを再建したことで知られる。その当時から、Bリーグ全体を考えた施策を実行してきた。「当時から言っていたのが、『クラブの成長なくしてリーグの発展なし、リーグの発展なくしてバスケ界の繁栄なし』ということです」と島田氏は話す。続けて、「各チームが成長し、バスケ界全体が成長すれば、シャワー効果でクラブにまた利益が還元されると考えてきました」と島田氏は述べ、「今、まさにその好循環の中にあります」とした。 実際に、経営改革を進めるBリーグの各クラブには、大手企業によるM&A（合併・買収）が進んでいる。たとえば、仙台89ERSが霞が関キャピタル（2023年）、サンロッカーズ渋谷はセガサミーホールディングス（2022年）、千葉ジェッツがMIXI（2019年）など続々と参入しており、その業種は多種多様だ。2021年に将来構想「B.革新」の概要を発表する前も含めると、M&Aの件数は約20件に上るという。 そして昨今のBリーグでは、先述の通り、大手企業がM&Aなどで「自らリスクを取ってクラブオーナーとなるケースが出てきました」。これらの動きは、リーグそのものの価値、収益力が高まってきていることの証しだということができる。 ではなぜ、これだけ多くの大手企業が魅力に感じるBリーグになれたのだろうか。
躍進の秘密は？「売上未達で参戦できない」異例の新ルール
島田氏は現在の好調さの要因について、スマホファーストのマーケティングやリーグ全体で行うデータ戦略（後編で紹介します）など複数の理由を挙げつつ、大きな要因の1つとして「将来構想『B.革新』と銘打った大改革の発表と遂行」を挙げた。 B.革新は2026-27シーズンから適用される改革案で、現在の単年の競技成績による昇降格制度を廃止する上、売上12億円、入場者数4000人、収容人数5000人以上のアリーナなど、これらのライセンス基準をクリアすることが、最高峰の「B.LEAGUE PREMIER」参加の条件となる。ちなみに最初の審査は、2024年10月から始まる予定だ。 島田氏は「クラブの収益力が高まればリーグの事業力が高まり、ひいては競技力向上につながります。もともと実業団時代から、バスケ界は勝利至上主義でした。すなわち、お客さまが入らなくても強ければ良いというのが常識だったのです」と指摘する。しかしBリーグでは、常にクラブに対して事業力の強化を促してきた。中期経営計画でも、「事業力の向上」を大きなテーマに定めている。 そして「B.革新」によりルールを変える。中でも、売上を参加条件に定めたのが大きな特徴で、島田氏が「こうしたプロリーグは日本では見られません」と語るように異例のルールと言えよう。いくらチームが強くても売上目標を達成できなければ、どんなビッグクラブであっても「B.LEAGUE PREMIER」から下部リーグへ降格の可能性がある。 こうしたビジョンが、各クラブに緊張感をもたらし、経営改革のスピードを高めているという。たとえば、他のクラブに先駆けてアリーナを2021年に完成させ、同年にホームアリーナとした琉球ゴールデンキングスは、2021-22シーズンの売上が前年の13億円から19億円へと1.5倍の成長を遂げた。アリーナ新造による収容人数の拡大がクラブ経営に大きなインパクトを与えるという成果が示されたのだ。他のクラブについても、B.革新を受けてアリーナ計画を続々と発表している。 そして来場者数が増え、収益が高まることで、スポーツビジネスに興味のある企業がM&A等によりリーグへ参入。島田氏は「経営に本気だったクラブに資金も流入し、IT人材やマーケティング人材の確保に投資することができるようになりました。スポーツ界でも屈指の、ビジネスクオリティーの高いリーグになる環境が整備されてきました」と語る。 こうした絶好調な状況が続く半面、赤字クラブが複数あることは課題だろう。この点について島田氏は「売上が伸びたものの、選手年俸やクラブ運営費用も上がったため、一定数の赤字クラブが見られました。ですが、シーズンごとに赤字クラブは減っていますし、2023-24シーズンでも、多くのクラブで経営改善が明らかに見られるので、赤字クラブの数はだいぶ減る見込みです」との見通しを示した。
