映画大好きオバマ元大統領、オスカー的中率が高い理由【アカデミー賞2024】
リストに覗く、ジェンダー平等意識
2018年に初めてお気に入りリストを公表した際には、アルファベット順だったのだが、翌年からの順番はどうやらお気に入り順。というわけで、2023年のベスト1は、『The Holdovers』。気になる2位のカナダ映画『BlackBerry』は、かつてセレブに愛された携帯電話ブラックベリーの誕生秘話を描いたコメディで、日本公開が待たれるが、そもそも日本ではブラックベリーの認知度が低いので無理そう。日本公開が未定の『A Thousand and One』は、サンダンス映画祭審査員賞を獲得したほか、数々の映画賞で候補となった知られざる話題作。この映画とイギリス製作のマーシャルアーツ・アクション映画『Polite Society』は、女性監督それぞれのデビュー作。前述した『パスト・ライブス/再会』のブレンダ・ソング監督も同様だったし、オバマ大統領のジェンダー平等意識の高さも伝わってくるチョイスなのだ。
高いジェンダー平等意識はやはり、最愛の妻ミシェルの影響もあるのだろう。毎年のお気に入り映画リストに、女性が主人公となる作品が多く登場している。例えば2022年は『TAR /ター』や『ウーマン・キング/無敵の女戦士たち』、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、『Emily The Criminal』、『秘密の森の、その向こう』が入っている。BEST1に選んだ『フェイブルマンズ』や2位の『別れる決心』はどちらも、はからずしも男性を翻弄してしまう女性が登場する。 しかし2022年で注目したいオバマ元大統領のお気に入り作品は、フランス映画『あのこと』だ。中絶が違法だった60年代のフランスを舞台に、思いがけない妊娠をした女子大生の葛藤をリアルに描き、多くの女性の共感を呼んだ作品だ。この年、アメリカの最高裁が「ローVSウェイド」判決を覆すという恐ろしい判断を下している。彼がこの映画を選んだのはきっと、女性の権利を剥奪しようとするアメリカの保守派に対するアンチなのだろう。