その月経不順、更年期のせいではなく体重減少や服薬が原因かも【更年期症状と間違えやすい病気に要注意! ⑪】
薬の副作用で月経不順になることも!
「また、時々見かけるのが薬剤の副作用による月経不順です。 一部の抗うつ剤や胃薬の中には、ドーパミンの働きを抑える作用をするものがあります。これらの薬を飲んでいると、副作用として『薬剤性高プロラクチン血症』を起こすことがあります。 プロラクチン(黄体刺激ホルモン PRL)は妊娠中や産後に多く分泌され、乳腺を発達させて母乳を生成する働きがあります。プロラクチンが高いときは排卵が止まり、月経がなくなります。 通常、プロラクチンの分泌はドーパミンによって抑制されています。しかし、薬によってドーパミンの働きが抑えられると、プロラクチンが増えてしまい、結果として月経に異常が出るのです。 血液中のプロラクチンの正常値は5ng/mL前後で、15ng/mL以上になると高プロラクチン血症と診断されます」 実際にあった例としては、40代後半の人で、胃の調子が悪く抑うつの症状もあったことから内科へ。そこで処方された薬を飲んでいたら、月経が止まってしまった。その時点では薬が原因と思わなかったので、更年期だと思い、小川先生の婦人科を受診。そこで血液検査などで、プロラクチン値が高いことなどから「薬剤性高プロラクチン血症」と診断された。 「対処方法は、その薬を処方している医師と相談のうえ、薬の種類を変えてもらうなどして服用をやめることです。私のもとに来た患者さんにもそのようにしてもらい、月経は戻りました。 高プロラクチン血症になる病気には、ほかに甲状腺機能低下症、下垂体の病気などがあります。こうした病気の可能性も考慮しつつ、慎重に判断していきます。 こうした症状を放置して無月経の状態が長く続くと、エストロゲンの減少により骨粗しょう症などのリスクが高まるので、早い治療が必要です」
【教えてくれたのは】 小川真里子さん 産婦人科医、医学博士。福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 特任教授。日本産科婦人科学会・日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医。専門は更年期医療学、女性心身医学、女性ヘルスケア。相談やカウンセリングを中心としたケアサポートとともに、最新のテクノロジーや視点を取り入れて、更年期を取り巻く環境や文化を積極的にアップデート。 イラスト/内藤しなこ 取材・原文/山村浩子