妻が専業主婦でも共働きでも、夫の家事分担は2割でしかない
<夫と妻が考える家事分担は「名もなき家事」への認識の違いで大きな差が生じている>
正月に帰省した家庭も多いと思うが、義理の親への気遣い等、苦痛を感じたという人もいただろう。親類が集まった酒宴で、男性は座ったままで、女性が準備や片づけにせっせと動く光景は、子どもにすれば「ジェンダー」を内面化させる装置でしかない。 【グラフ】夫婦の家事分担割合(妻と夫の双方の回答) 職場と比べて、家庭におけるジェンダー平等はあまり進んでいないように思われる。外部の目が入りにくい「私」の領域という理由もあるだろう。それを端的に示すのは、夫婦の家事分担の統計だ。 夫婦の家事時間が分かる統計は数多いが、諸々の条件を統制した分析ができる調査データとして、東京都が2024年に実施した『とうきょうこどもアンケート』がある。子育て中の母親3600人ほどに、「夫は家事の何割を分担しているか」と尋ねた結果を見ると、最も多いのは「0割~1割以下」で30.9%、その次が「0割」で26.9%。この2つだけで6割にもなる。分布から平均値を出すと13.2%。子育て世帯において、夫は家事の1割ちょっとしか担っていないことになる。 対象の母親を就業状態や就業時間でグループ分けし、夫の分担割合の平均値を出すこともできる。<図1>は、それに基づいて夫婦の分担割合をグラフにしたものだ。 <図1> どのグループにおいても、夫の家事分担割合は高くない。妻が主婦の家庭で7.4%、正社員の家庭でも18.9%にとどまる。2割にも達しない。右側は、妻(有業)の就業時間別の結果だが、妻が1日10時間以上働いている家庭でも、夫の分担率は23.4%でしかない。 正社員として夫と対等以上働きつつ、家事の8割を担わされる。右側のグループの母親は、ヘトヘトの日々を送っていることだろう。こういうデータをみると、未婚化・少子化が進むのも頷ける。フルタイム就業を継続するとなると。仕事・家事・家族ケアのトリプルの負荷がのしかかる。それなら結婚は御免。こう考える女性も出てくる。 上記のデータは母親に尋ねた結果で、父親に問うたら違う結果になるのでは、という疑問もあるだろう。妻の就業状態に依拠して父親をグループ分けし、自分の家事分担割合を答えてもらった結果を平均することもできる。妻と夫の回答を左右に並べると、<図2>のようになる。 <図2> 夫は家事の何%を担っているか。妻と夫本人の回答を平均した結果はかなり差があり、妻が主婦の家庭だと前者が7.4%、後者が14.1%。妻が正社員の家庭だと順に18.9%、37.0%。どのグループでも、夫は妻の評価の2倍家事をしていると考えている。それでも、妻と夫の回答の中間をとると正社員共稼ぎ世帯の家事分担は「妻7:夫3」で、妻に偏っている印象は否めない。 家事をどう見るかについて、夫婦の認識に差があることも問題だろう。掃除・洗濯・料理のような分かりやすいものだけでなく、目に見えにくい「名もなき家事」もある。<図2>のグラフには、この部分への認識の違いが出ているものと思われる。細かな「名もなき家事」をリスト化し、どちらが担っているかで色分けするアプリも開発されているが、こうした「見える化」は妙案だ。 ここで見たのは東京都のデータだが、地方ではもっと偏りが大きいかもしれない。家庭内でのジェンダー平等を進めない限り、未婚化・少子化に歯止めはかかりそうにない。 <資料:東京都『とうきょうこどもアンケート』(2024年)の個票データ>
舞田敏彦(教育社会学者)