新体制で秋に臨んだ伊奈学園、”実力派監督”のもと熊谷商の好投手攻略!【24年秋・埼玉県地区予選】
<秋季埼玉県高等学校野球大会 東部地区予選:伊奈学園 3-1 熊谷商>7日◇地区代表決定戦◇UD上尾球場(上尾市民球場) 【動画】批判も糧に挑戦続ける33歳の青年監督。今春からは異例のチャレンジへ... 伊奈学園はこの秋から川口や春日部東で監督経験のある富澤雅浩部長が監督に就任し、新体制となって実力校・熊谷商と対戦した。 伊奈学園は地区の初戦で秀明英光を逆転で下し勢いに乗っている。新人戦では熊谷商が伊奈学園に4対1で勝利しているが今回はどうか。 先発は熊谷商がエース深水友希(2年)、一方の伊奈学園は背番号10の右腕・茂木颯太(2年)が登板し試合が始まる。 熊谷商・深水は既にMAXで140km近い直球を投げ、旧チームのエース・中村謙吾(3年)を思わせる本格派右腕だ。一方の伊奈学園・茂木は右スリークウォーターからMAX137kmの直球を力感のないフォームからテンポ良く投げ込む。 先制したのは伊奈学園であった。 伊奈学園は初回、ストライクが入らない熊谷商・深水の立ち上がりを攻め立て、1番・鈴木颯、2番・川口祐仁朗(2年)、3番・内古閑壮真(2年)が3連続四球で出塁し、労せず無死満塁のチャンスを得る。後続が凡退し二死満塁も、6番・鈴木日彩(2年)の内野ゴロが相手タイムリーエラーを誘い1点を先制する。 伊奈学園は3回表にもこの回先頭の川口が四球を選び出塁すると、続く内古閑がきっちりと送り一死二塁とする。さらに4番・武井晴希(2年)を迎えワイルドピッチで二走・川口は三塁へと進むと、武井晴がライト前タイムリーを放ち2点目を奪う。 熊谷商ベンチは早くも深水を諦め、1年生左腕・大久保美槻へスイッチする。 伊奈学園は熊谷商・大久保の立ち上がりを攻め、5番・楠朋樹(2年)の犠打が内野安打となり一死一、二塁とすると、さらに続く鈴木日の所でワイルドピッチにより二走・武井晴が三塁へ進み一死一、三塁とする。二死後、7番・菅原彪人(2年)がレフト前タイムリーを放つなど早くも3点差をつける。 投げては伊奈学園・茂木が3回の二死満塁、4回の二死一、三塁、6回の一死三塁など毎回のようにピンチを招きながら得点を与えない。 一方の熊谷商・大久保も4回以降立ち直り、伊奈学園打線を6回2/3被安打2、8奪三振無失点に抑える好投を披露する。新人戦でも伊奈学園を抑えたそうで1年生ながらまとまりがあり投球術で勝負できる投手だ。 試合は3対0のまま終盤へと進む。 熊谷商業の反撃は7回裏であった。 熊谷商業はこの回先頭の松島慶典(1年)が四球を選び出塁すると、一死後、途中出場の村越亜裕汰(1年)がきっちりと送り二死二塁とする。ここで続く志保田鈴士(1年)がレフト線へタイムリー二塁打を放ち1点を返す。だが後続は打ち取られ反撃もここまで。 伊奈学園・茂木が要所を抑え公式戦初完投。 結局、伊奈学園が熊谷商とのリベンジマッチを3対1で制し県大会出場を決めた。 まずは熊谷商、エース深水はやや乱れたが、リリーフした大久保はよく投げた。それだけに課題は4失策の守備と打線か。毎回のように得点圏まで走者を進めながら10残塁とあと一本が出なかった。 「若いチームなので夏休みから苦しい試合が続いて。新人戦はピッチャーが頑張ってくれたのでシードに辿り着きましたが。初回の深水は想定外。経験不足かな。ボールは悪くなかったが空回りしていた。早い段階で追いつきたかったがうまくいかなかった。若いチームなので2年生に引っ張って欲しいが2年生が足を引っ張る形になってしまった。攻守に鍛え直します」(新井監督)と、悔しさを滲ませるも前を向いた。 一方の伊奈学園はとにかく茂木に尽きる。 「MAXは夏まで130kmでしたが、コーチとフォームを見直して7km速くなった。新人戦で1イニング4点取られてそれで負けたのでリベンジできて良かった。高めの直球も新人戦以降に練習した。ピンチになっても力を入れ過ぎないっていうのを目標でやっていて今日はそれが出せた。スタミナには自信がある。8、9回は足が攣っていて思い通りに投げられませんでしたが変化球を使って完投できた」(茂木)と、この日は武井晴に奪われた背番号1奪還と熊谷商へのリベンジに燃えていた。まずは冨澤体制に代わり、まずは県大会出場を決めた伊奈学園。中学生の練習会にも大人数が参加し活気が戻りつつある。 「茂木は戦う姿勢が見えて素晴らしい出来だった。武井晴と競い合って良い影響が生まれている。(ここ数年は伊奈学園の部長として入り)采配は4年も5年も空いているとブランクが。一個遅れたとか読み違えたとか選手に謝りっぱなしです。選手達と一緒に戦っている感じで。選手が逞しくやってくれた。熊谷商さんは伝統的に投手力があるので。初回はあんな展開になるとは誰も思っていなくて選手達は硬くなった。そういう部分での声掛けをやらなければいけないんですが。大久保君には新人戦に続きまたやられてしまいました。ただ、リベンジだぞと僕が言わなくても選手達が口にしていたのでそこは成長かな。『27個目のアウトを』と本人達が言っていたので大丈夫かなと」(冨澤監督)と、まだまだブランクはあるようだが、その分選手達の自主性を促すことができている。 まずは良いスタートを切った冨澤監督と伊奈学園。選手の成長を感じ良い状態で県大会を迎える。県大会でも上位進出を果たすことができるか。