コロナ禍の中、韓国総選挙で与党圧勝 対日政策は強硬になる?
新型コロナウイルスの感染拡大が世界中で続く中、韓国では総選挙が行われ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の与党「共に民主党」が圧勝しました。この結果は、残り2年を残す文政権の対日政策などにどんな影響を与えるのでしょうか。元外交官で平和外交研究所所長の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【画像】「少女像」展示中止が波紋 そもそも「慰安婦問題」とは?
与党単独で法案上程や採決が可能に
韓国で4年に1度の総選挙が4月15日に行われました。その結果、革新系与党の「共に民主党」が改選前の128議席を大幅に上回る180議席を獲得しました。韓国は1院制で、定数が300議席なので過半数は151です。これにより、与党単独での法案上程や採決が可能となりました。 一方、保守系最大野党の「未来統合党」は、保守層や中間層の支持拡大を狙いましたが、与党の勢いを止めることはできず、改選前より9議席少ない103議席しか獲得できませんでした。
今回の選挙は、2017年5月に発足した文在寅政権の5年の任期が折り返しになるタイミングで行われました。結果いかんで政権はレームダック化することもあり得ましたが、文大統領は国民の信任を回復することに成功し、今後の政権運営を安定的に行うことが可能になりました。 「共に民主党」の李洛淵(イ・ナギョン)前首相は選挙対策の責任者を務め、注目を浴びました。李氏は今後同党の代表となり、次期大統領候補になる可能性が出てきたとみられています。 一方、未来統合党の黄教安(ファン・ギョアン)代表は大敗した責任を取って代表を辞することを表明しました。
経済改革で雇用と経済の失速を招く
文政権は、北朝鮮の非核化をめぐり2018年6月にシンガポールで行われた米国と北朝鮮の首脳会談実現への仲介役を務めるなど積極的な外交を展開しました。しかしその後、特に翌年のハノイでの第2回米朝首脳会談が失敗に終わって以降は表立った役割を果たすことは困難になっていました。それでも文大統領は米朝交渉の進展と南北関係の改善に努めてきましたが、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長は応じる姿勢を見せず、思うような結果は得られませんでした。 韓国内では、経済改革に力を入れてきました。特に財閥に依存した経済構造の打破と雇用創出は大統領選の公約でした。また経済政策の一環として最低賃金の引き上げも行いました。 しかし最低賃金の引き上げは中小企業の競争力を弱め、結果的に雇用の減少と経済の失速を招く原因となりました。また、経済不振はかねてからの問題であった格差を拡大することにもなり、若者は社会の先行きに不安を募らせたといわれています。 文政権は発足直後、84%という高支持率を獲得し、ロケットスタートを実現したといわれましたが、その後は40%台にまで落ちていきました。GSOMIA(軍事情報包括保護協定)を韓国政府が破棄する可能性があると伝えられた際、一時的に支持率が少し回復したこともありましたが、大勢は変わりませんでした。 2019年10月になると支持率はさらに落ち込み、39%を記録。初めて4割を下回りました。その要因は、経済不振に加えて、文大統領が反対を押し切って法相に任命した曹国(チョ・グク)氏が辞任に追い込まれるなど側近のスキャンダルがあったからだと指摘されました。