「2型糖尿病」発症リスクは“1日ハム2枚”で上昇 加工肉を食べ続ける危険性とは
イギリスのケンブリッジ大学らの研究グループは、「ハムなどの加工肉を毎日50g摂取する人は、2型糖尿病リスクが10年後までに15%上昇する」という研究結果を発表しました。この内容について中路医師に伺いました。 【イラスト解説】糖尿病の人が“食べてはいけないもの”
研究グループが発表した内容とは?
編集部: イギリスのケンブリッジ大学らの研究グループが発表した内容を教えてください。 中路先生: 今回発表された研究は、イギリスのケンブリッジ大学らの研究グループが発表したもので、研究結果は学術誌「The Lancet Diabetes & Endocrinology」に掲載されています。 研究グループは、世界31カ国ののコホートデータを対象として解析をおこないました。対象となったのは196万6444例で、中央値10年の追跡期間中に10万7271例の2型糖尿病発症が同定されました。 食肉摂取量の中央値は、未加工赤身肉で0~110g/日、加工肉で0~49g/日、鶏肉で0~72g/日でした。 解析の結果、3種類の肉のそれぞれの消費量が多いほど、2型糖尿病の発症率が増加していました。未加工の赤肉を1日あたり100g摂取するとリスクは10%上昇し、加工肉を1日あたり50g摂取すると15%リスクが上がっていました。 そして、鶏肉を1日あたり100g摂取すると8%リスクが上がっていました。また、加工肉を未加工の赤身肉、または鶏肉に置き換えることは、2型糖尿病の発症率の低下と関連していたとのことです。 今回得られた結果について、研究グループは「食肉、特に加工肉と未加工の赤肉の摂取は、集団全体における2型糖尿病発症の危険因子である。 これらの所見は、公衆衛生のために肉の消費を減らすことの重要性を強調し、食事ガイドラインに情報を提供すべきである」と結論づけています。
2型糖尿病とは?
編集部: 今回の研究対象になった2型糖尿病とは、どのような病気なのでしょうか? 中路先生: 2型糖尿病は、糖尿病の中でも患者数が最も多いタイプです。遺伝的な理由によるインスリン分泌の能力低下に加えて、生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が起こり、インスリンが相対的に不足した場合に発症します。 一般的に、生活習慣病と呼ばれる2型糖尿病ですが、インスリン分泌の能力低下が鍵を握ります。生活習慣が乱れることだけではなく、2型糖尿病患者は糖尿病になりやすい遺伝的な理由を持っているとも言えます。 ゲノム解析では2型糖尿病の要因となる多くの遺伝子が報告されており、中でも「KCNQ1」という遺伝子は、日本人の2型糖尿病発症に強く関連していることが判明しています。 2型糖尿病の治療方法は、インスリン療法やインスリン以外の薬物療法、GLP-1受容体作動薬という注射薬などです。