妻に「途中でやめるかも…」官製談合事件受けた内部調査で、歴代県幹部が失職覚悟の葛藤を証言 県は否定も「引き継ぎ」示唆する内容
新潟県新発田地域振興局農村整備部発注の工事を巡る官製談合事件を受け、県が行った内部調査で、一部の農村整備部長経験者が前任者から談合に関する「引き継ぎ」をうかがわせる証言をしていたことが、新潟日報社の情報公開請求で分かった。県はこれまで歴代部長ら10人に聞き取り調査を行い、このうち8人が予定価格などの秘密事項を業者側に漏らしていたとする一方、「引き継ぎはなく、組織的関与は認められない」と説明してきた。 【表】新潟県新発田地域振興局の官製談合事件を巡る経緯 「妻には、『途中でやめることになるかもしれない』と言っていた」 新発田地域振興局農村整備部で2023年に発覚した官製談合事件。歴代の部長の1人は、県の内部調査に対し、こう答えていた。官製談合への関与が露見し、職を失う覚悟をしていたことを意味する言葉と思われる。 開示された文書からは、歴代部長が罪悪感や葛藤を抱きながら、違法行為に手を染めていた実態が浮かぶ。 「ものすごく嫌だった。また入札不調が心配だった」「(情報を)提供した理由は業務量の多さ。事業の進捗(しんちょく)のためにはやむを得ないと思った」「自分の心が弱かった」 情報漏えいを認めた部長経験者はいずれも、逮捕された建設会社元顧問A氏からの投げかけがきっかけだったと話し、理由をこのように説明していた。 長年続いた悪習を断ち切れなかったことについて、「ずっと前から行われていたことをひっくり返すのは難しかった。業界に混乱が起き、軋轢(あつれき)が生じると思った」との証言もあった。 こうした聞き取り結果はこれまでの県の説明と矛盾しない。 しかし、ある部長経験者が「『A氏(原文は実名)が相談に来るから乗ってやってくれ』という引き継ぎはあった。後任にも引き継いだかもしれないが、よく覚えていない」と回答するなど、県が否定する引き継ぎの存在をうかがわせる記述はあった。 県は組織性の有無を判断するに当たり、引き継ぎの定義を議論し、県内部の引き継ぎの規定や判例とも照らし合わせた上で、「引き継ぎなし」と結論づけたという。 情報公開制度に詳しいNPO法人「情報公開クリアリングハウス」(東京)の三木由希子理事長(専修大客員教授)は「県はすごく狭い意味で引き継ぎの言葉を使っている。あからさまではなくても、一部では事実上の引き継ぎがあったと言えるのではないか」と指摘した。
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