大阪万博はどう考える? 愛知万博跡地にみる “万博がもたらすもの”
国際博覧会(万博)の2025年大阪開催を目指して今月、松井一郎大阪府知事らがパリで初のプレゼンテーションに参加、招致レースが本格的にスタートしました。実現すれば2005年の愛・地球博(愛知万博)以来の日本開催になりますが、愛知でも「この時代に万博を開く意味とは」が長く問われ続けました。万博のもたらすものとは何なのか、愛知万博のその後から考えてみましょう。
「ジブリパーク構想」の意味
「ジブリの世界観は愛・地球博の理念に一致する。その世界を広げていくことが万博の理念の継承、レガシー(遺産)を進化させることにつながる」。 愛知県の大村秀章知事は今月、記者会見でこう述べて「ジブリパーク」構想を明らかにしました。 万博会場を公園化した愛知県長久手市の「愛・地球博記念公園(モリコロパーク)」には、スタジオジブリ映画『となりのトトロ』の主人公の家を再現した「サツキとメイの家」をはじめ、万博パビリオンや跡地を活用した施設が10カ所ほど残っています。これらを生かして「トトロのふるさと村」などジブリの世界観を表す施設を公園内に点在させるイメージで、大村知事とスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーが合意したそうです。 県は今月開会した愛知県議会に調査費2,000万円を盛り込んだ補正予算案を提出。事業主体や着工時期を含めた整備手法などの詳細はこれから詰めるとのことですが、すでに全国的な期待は高まっています。これを機に、万博の意義を見直した人も多いのではないでしょうか。
里山開発批判され会場を縮小
愛知万博は当初、愛知県瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」と呼ばれる里山の約540ヘクタールを切り開いて会場にする計画でした。開催後は、跡地をニュータウンとして市街地化、里山を走る都市計画道路も通す予定でした。 しかし、海上の森では希少種のオオタカの営巣などを確認。「環境」万博の理念に反するとして市民団体や専門家から開催反対の声が上がり、博覧会国際事務局(BIE)も跡地開発を批判して計画の抜本的な見直しを求めました。 その結果、メーン会場は隣接する長久手市(当時は長久手町)にあった「愛知青少年公園」の158ヘクタールを利用することに。海上の森の開発は最小限にとどめ、15ヘクタールをサブ会場とすることで最終決定がされました。 愛知青少年公園には南に森がありましたが、そこには手を付けず、既存のテニスコートや野球場などを利用。地形や植生もできるだけ変えないよう、細い柱で回廊を持ち上げる「グローバル・ループ」が会場内の主要通路として造られました。その他にも、当時の緑化や省エネなどの最先端技術が取り入れられ、「自然の叡智(えいち)」という理念を具現化することになったのです。 こうして当初は危惧や混乱が目立った愛知万博も、2005年3月から185日間の会期で2,200万人を超える来場者数を達成し、入場料などの利益から最終的に約65億円の剰余金を残すほどの成功に終わりました。