変わる「駐妻」、海外赴任に同行した女性たちのキャリア断絶を防げ 三浦梓さんの思い
国内転勤に帯同する女性たちに通じる悩み
――確かに駐妻と同じ問題が、国内の地方転勤に帯同する女性たちにも起きていますよね。 国内の転勤に帯同する方たちの方が、さらに課題が大きいと感じています。なぜかというと、海外にいると「海外だから働けないよね」とある意味、割り切れるんですよ。ただ日本だと言葉やビザの壁はないから「働けるじゃない」と思われてしまう。だけど実際は夫が3年に1回転勤となると、長く働くことができずにキャリアを継続するのが難しい方たちが多いので、そういう人たちにこそ、資格とか、週3で働く働き方とか、オンラインで働く働き方を紹介したいと思っています。 今まで駐妻キャリアnetで紹介していた仕事をそうした女性たちにもお渡しすることを始めたいと思っています。 ――地方帯同のために仕事を辞めて自己肯定感が下がってしまう女性や、単身赴任を選択せざるを得ないという家庭も多いと思いますが、もし駐妻キャリアnetの取り組みが国内に応用できたら、変わると思いますか。 変わると思います。働きたい人たちが、そういう機会があると気づくことが、まず大事だと思うんです。私自身が駐妻になったとき駐妻キャリアnetがあるだけで自分が目指す価値観の似ている人たちがいると、すごく救いでした。 それこそ国内転勤妻の人たちが、「働きたい」と言いにくい状況もおそらくあると思うんです。同じ団地や支店内で「働かなくても養ってもらえる」世界の役員の奥さんとの付き合いとかがあって、周囲に相談しづらい点は、駐妻と構造が似ているかもしれないと思います。
休職制度よりも、多様な働き方を
――三浦さんが日本の企業に求めるのは、休職制度の導入だけではないんですよね。 はい。実は休職制度を広めたいという考えはあまりないんです。休職制度をとることで残った社員たちで仕事を回す必要もあり、休職制度を終えた社員が復帰する際に肩身が狭くなるなどあります。休職制度を利用した後、復帰する時に仕事の感覚を取り戻すまで時間がかかります。すぐに価値を発揮するためにも、休職中に付加価値をつけてきたということも大事なのではと思います。 つまり必要なのは、「キャリアを止める」のではなく「キャリアをいかに継続する」のか。 駐妻期間にキャリアを継続する仕組みを作り、企業がその実績を見て採用するかどうか選考できる状態にしたい。多くの人がもっと気軽に就職とか、仕事ができる環境があるべきだと思っています。「履歴書上のブランク」にとらわれずに熱意や能力を適正に評価してほしいと思いますね。そうなると、キャリアの継続のために「休職制度」を取らなければという考え方が減っていくと思います。 休職制度を取るか、取らないかという二択ではなく、オンラインで働く海外社員という働き方を残したり、週3日でもいいから休まないで働き続けたりする選択があればいいと思います。 働いていない期間があると、働くマインドが徐々に失われていくんですよね。それが1年にもなれば、相当鈍ると思うんです。だから休職期間に仕事の感覚を失わないために、会社から研修などのアクションを取ったり、その人が海外にいるからこそ役に立てる仕事を少しでも依頼したりするのがいいのかなと思っています。 仕事をどう切り分けるかとか、どうスケジュールを組むかといった仕組みを企業が一から調整して作るのは大変なので、そこは知見のある駐妻キャリアnetが担って、コンサル的な役割も果たしていきたいと思っています。
朝日新聞社