「驚愕の上がり32秒5」武豊の“神騎乗”が生んだドウデュース“究極の末脚”…「偶然を必然にした」天才の手腕とは? 衝撃の天皇賞・秋のウラ側
腹を括った「神騎乗」が、究極の末脚を引き出した――。 第170回天皇賞・秋(10月27日、東京芝2000m、3歳以上GI)を、武豊が騎乗した2番人気のドウデュース(牡5歳、父ハーツクライ、栗東・友道康夫厩舎)が大外から驚異的な末脚を繰り出して優勝。1984年のグレード制導入以降7頭目となる、4年連続GI制覇を成し遂げた。 【衝撃写真】「驚愕の上がり32秒5」ドウデュースと武豊「まるで倍速」“究極の末脚”の連続写真がカッコいい…「おめめクリクリ」パドックの様子や元気すぎるレース後の姿も一気に見る(全36枚)
スローペースで後方2番手「これでダメなら…」
曇り空の下、15頭の出走馬が良馬場の芝コースに飛び出した。 武のドウデュースは他馬と横並びのスタートを切ったが、手綱を抑えて内と外の馬を先に行かせ、後方に下げた。 最初のコーナーを回りながらホウオウビスケッツがハナに立ち、向正面へ。 1番人気の牝馬三冠馬リバティアイランドは中団、ドウデュースは後方2番手につけている。 ほぼそのままの隊列で馬群は3コーナーに差しかかった。1000m通過タイムは59秒9。良馬場で、強豪が揃ったこのメンバーにとってはスローペースと言っていい。 こういう遅い流れになると、どの馬も最後に速い脚を使うことができるので、少しでも前につけた馬が有利になる。そうしたなか、ドウデュースは相変わらず先頭から10馬身ほど離れた後方2番手のまま。武はやや重心を後ろにかけて手綱を抑え、馬の行く気を宥めている。 「ペースはあまり速くなかったんですけど、前半はムダな動きをせず、ラストに賭けようと思っていました。中途半端なレースはしたくなかった。これでダメならしょうがないという気持ちで腹を括って乗りました」 そう話した武にとって、スローのなかの後方2番手は、「覚悟の位置取り」だった。周囲に他馬のいない、「単騎」の後方2番手だ。馬ごみのなかで折り合わせるつもりはなかったという。 「今日は(馬ごみに)入れる選択肢はなかった。2コーナーで外に馬がいる状況だったので、下げるほうがいいだろう、と」
他馬が止まって見えるほどの“圧倒的な速度差”
逃げたホウオウビスケッツが先頭のまま直線に入った。 武は、4コーナーを完全に回り切ってから、ドウデュースをじわっと外に持ち出した。 「手応えはよかったです。ダービーの3、4コーナーを思い出すくらいでした。ペースがあまり上がらなかったので、全体の上がりも速くなるだろうと思っていた。それでも、賭けるしかなかった」 ラスト400m地点でもまだ後方2番手。先頭との差は6、7馬身か。 武が手綱を何度も持ち直しながら促すと、ドウデュースが四肢の回転をさらに速める。同時に首の上げ下げのテンポも早まり、武の肘の屈伸のスピードも高まっていく。大外から1頭、2頭とかわしながら、武は、ラスト200m手前で右ステッキを入れた。つづけて、2発、3発と右の逆鞭を入れると、ドウデュースがまた加速する。 一頭だけスピードが違った。他馬が止まって見えるとは、まさにこのこと。武の手の動きが追いつかなくなるほどストライドのピッチを速め、矢のように伸びる。 ラスト100m地点で、誰の目にも勝敗が明らかになった。大外を飛ぶように伸びるドウデュースが他馬との圧倒的な速度差を見せつけ、凄まじい勢いで突き抜けた。
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