産学連携のエキスパート 次は女将で「つなぎ役」 定年後に居酒屋開店 滋賀・草津
ものづくり支援課長や連携推進部副部長などを歴任し、令和5年3月に退職。近畿経済産業局長から、それまでの「中小企業の研究開発から事業化・販路拡大までの一貫した支援」に対する感謝状が贈られた。
人と人をつなげることによる異業種間のマッチングが「天職」だと感じた篠原さん。退職後の夢に描いていたのが、「おいしい肴(さかな)と酒でくつろぎながら出会えるおとなの集い家」だ。
退職後に開店場所を探していたところ、知人から、草津市の多文化共生支援センターの活動拠点になっている建物の1階で、元料亭の厨房(ちゅうぼう)が残るスペースを紹介された。「シニア層を中心とする情報交換の場に」という店のコンセプトが、外国人支援や子ども食堂などを通じて多様なつながりを大事にするセンターの理念と合致した。
料理は各種おばんざいや刺し身などを一品数百円で提供。メニューはどれも篠原さんのめいなど料理が得意な親族らも協力して工夫を凝らしたものだ。酒はビールや焼酎のほか、滋賀の地酒もそろえる。
買い出しや仕込みだけでなく、店を開けている間立ち続けるのは年齢的には正直しんどい。県工業技術振興協会時代に産学連携で手掛けた立ち仕事でも座れる椅子が、実はカウンターの内側で活躍している。
バスケットボールBリーグ「滋賀レイクス」の熱烈ファンでホームゲームに足しげく通う篠原さん。店がオープンしてからは観戦の回数が減ってしまったが、夜に公式戦がある日は店内のモニターで観戦する。
「求められていたはずなのになかったような、そんなお店を目指したい」。篠原さんはきょうもカウンターに立ち、客同士をつなぐ。(川西健士郎)
◇開店時間は午後5~10時。日、月曜定休。問い合わせは同店(090・2388・8795)。