【アメリカから見た中国】北朝鮮の不安定化を恐れる中国
米ペンシルバニア大で取材に応じた、同大現代中国研究所所長のゴールドシュタイン教授(マシュー・コラサ撮影)
【連載・アメリカから見た中国(1)北朝鮮の不安定化を恐れる中国】 「クジラに囲まれた1匹のエビ」が、北東アジアにおける朝鮮半島の地位を表すのに、よく使われるフレーズだ。韓国の経済成長、北朝鮮の長引く孤立と、水爆実験とされるもの、中国の拡大する自己主張、そして日本の近年の防衛政策の変化によって、この地域の地政学的な風景が変わろうとしてる。中国研究の第一人者で、ペンシルバニア大学現代中国研究所所長のアヴェリー・ゴールドシュタイン教授に、近年の展開について意見を聞いた。
北朝鮮の「体制の不安定化」を恐れる中国
北朝鮮のイデオロギーである主体思想(チェチェ思想)によって、この閉ざされた国は外部の影響から大きく切り離されてきた。同盟国で北の国境を接する中国だけが、わずかな例外だ。中国は北朝鮮にどのような影響力を持っているのか。 「アメリカ人は、中国が北朝鮮に対して持っている影響力を十分発揮していないと考えている」とゴールドスティン教授は説明する。しかし、中国が北朝鮮の閉鎖的な体制に対して影響力を及ぼすつもりがないのかといえば、そうではないという。「中国は、アメリカが北朝鮮との交渉に入るのを手助けしましたし、北朝鮮に対する制裁にも賛成しました」 ただ一方で、「ケリー国務長官は中国側と面会した際、中国側は新しい制裁に賛成すると言ったと同時に、『その制裁は北朝鮮における不安定化をもたらすほど厳しいものであってはならない』とも主張しています」
北朝鮮の紛争による「難民の流入」を懸念
そこには、中国側の朝鮮半島情勢の不安定化への懸念があるという。「中国とアメリカの利益は、核問題においては一致しています。一方で中国は、現体制が反発し、政治の不安定化が紛争に繋がる可能性を心配しているだけではなく、北朝鮮において戦闘が起こった場合に中国に難民が流入することを心配しているのです」。中国政府は、「唯我独尊」的な考えを持った東の隣人に配慮しながら、注意深くバランスを取る行動をとっている。