韓国5大メジャー対竹やり日本の奇跡 「侍タイムスリッパー」は世界映画界の新しい成功モデル
新しい奇跡の誕生
しかし、筆者が携わっている日本映画界の現実を見てみると、24年皆が新しい奇跡の誕生を目撃している状況に胸がいっぱいになる。予算を比べると「プロジェクト・サイレンス」の100分の1、「ハルビン」の160分の1のたった2000万円で興行神話を書き加えた「侍タイムスリッパー」がそれなのだ。いったいこの映画の安田淳一監督はどういう人だろう。 ドキュメンタリーでもない立派な時代劇ファンタジーを監督、脚本、撮影、照明、編集まで担当しながら作った。映画をヒットさせなければならない理由は、23年に父の逝去で後継者となった実家の米作りを続けるためだった。もちろん映像作家としての実力がなかったわけではない。デビュー作の「拳銃と目玉焼」も、第2作の「ごはん」も全国のミニシアターでのロングランヒットで知られた作品だった。まさにヒューマンドラマのような履歴書。これと共に筆者の同窓たちに「見ろ」と叫びたくなる作品のクオリティーだ。「SHOGUN 将軍」で世界がその文化史的ポジションをもう一度確認してくれた時代劇で始まる「侍タイムスリッパー」は、ある瞬間背景が現代に変わってしまう。告白すると、このシノプシスだけを読んで、筆者は「よくあるタイムスリップコメディーだろう」と勘違いしていた。しかし、違った。
〝映画に命をかけている〟姿に感嘆
気がつけばタイムスリップコメディーは初期の設定に過ぎず、いつの間にか登場人物の全員を応援したくなる温かい喜劇の一方で、「斬られ役」という「時代劇のスタントマン」の探究、そして現代の侍として剣に人生をかける男たちの哀愁を帯びた人間ドラマが繰り広げられていた。何より感嘆せざるを得なかったのは実に「生きる伝説」ともいえる 《殺陣技術集団・東映剣会》元会長・峰蘭太郎の登場。厳しい映画業界の現実について嘆きながら、「B-29が飛んでくるのに、まだ竹やりで相手をしろというのか」と一喝した筆者は、それにもかかわらず文字通り「映画に命をかけている」峰らの姿を見ると、穴があったら入りたくなる。 筆者の後輩の惨敗から10日後の8月17日に公開されて以来、これまで終わらずに「1館から344館」という感動のドラマとして観客に伝わっているこの驚くべき作品は、日本映画界を超え、世界映画界の新しい成功モデルとして浮上しているのだ。経営学修士出身の投資会社のアナリストの分析や、製作費ほどの宣伝費を使うハリウッドスタイルのマーケティングではまねすらできない物作りの力。こうして「映画の運命」について、「劇場の運命」について、「誰がより暗い展望を出すのか」競争でもしているように見える今の世相にもかかわらず、我らはもう一度考えてみることになるのだ。「まだ頑張れば分かってもらえる社会で良かった。そういう社会で映画を作ってくれる人がいて、そしてそういう彼らを応援しながら同時代を生きていて良かった」と。
洪相鉉