創業127年目の組織風土改革 明電舎に学ぶイノベーション人財の育て方
組織風土改革の成功の鍵は、成功するまで続けること
――さまざまな取り組みを始めてから、どのような変化を感じていますか。 坂野:今、社内で常時アイデアを受け付ける「アイデア公募」をしているのですが、ある部門からは頻繁にアイデアが送られてきます。その部門に事情を聞いてみると、朝の10~15分、みんなでアイデアを練る時間を設けているそうです。客先でヒアリングした内容や、競合他社にあって自社にないものなど、アイデアが飛び交う環境はまさに私たちが目指していたものだと感じています。 野口:ここ10年ほどでいうと、経営層や中間管理職の若返り、それから女性比率が増えたことが変化として挙げられるかと思います。先ほど経営人財の早期育成の話がありましたが、経営陣全体も若くなっています。 坂野が良い例ですが、若くして部課長に昇進する事例も増えています。明電舎は40代で課長、50代半ばで部長になるのが平均的なのですが、坂野は30代で課長になり、40代前半で部長に抜擢されました。実力がある人財は過去の慣習にかかわらず昇進していけるようになりました。 ――ダイバーシティや女性活躍の観点ではいかがですか。 野口:DEIへの理解もかなり浸透しました。インフラメーカーなので、志望者数が少ない技術職の女性を採用するのには苦戦しているのですが、少しずつ女性比率を引き上げられています。 坂野:私が入社したのは2008年ですが、その頃と比べるとかなり状況は改善したと思います。例えば、当時は営業職に女性が配属されることはほぼありませんでした。技術職でも、「危険で、きつい現場」には女性は配属されませんでした。女性への配慮からそのような慣習が続いていた側面もあると思います。 DEI推進を始めてからはそのような慣習を見直し、女性が営業に配属されることや管理職に登用されることが珍しくなくなりました。2024年は、執行役員に女性が就任しています。イノベーションの観点からも、年齢や性別が幅広い属性の人がいたほうが、多様なアイデアが出やすくなる。同質性の高い組織ではなく、多様なバックグラウンドを持つ人から構成されるチームの方が、成果が上がりやすいというDEIの意義が、かなり浸透したように思います。 ――組織風土改革として、今後予定されていることはありますか。 野口:経営人財育成と女性活躍推進の観点から、経営人財に女性を増やすための取り組みを継続していきたいと思っています。その一環として、2022年から「サポーター役員制度」を始めました。常務執行役員以上の役員が、選抜された女性社員のサポーターにつき、1年間仕事のディスカッションやキャリアプランの作成などを伴走する取り組みです。視野を広げることや今後のキャリアに役立ててもらえればと思っています。 ――組織風土改革やイノベーション創出には大きな困難が伴います。そうした悩みを抱える人事担当者にメッセージをお願いします。 坂野:とにかく続けることが大切です。結果が伴わないからといって途中でやめてしまうと「一時的なイベントだったのだな」と思われ、それまでに醸成したものまで手放すことになってしまいます。私たちも、中期経営計画の中にイノベーションの項目を盛り込んでいますが、達成したら今期で終わりではありません。続けることにとことんこだわっていきたいですね。 野口:地道に取り組むしかない、という点では坂野と一緒です。私個人としては、対等な立場でコミュニケーションを取ることが重要だと思います。志を同じくしているのであれば、年齢、性別や立場等は関係ありません。属性にとらわれず、課題に真正面から向き合いコミュニケーションを取ることで、あらゆることの土台となる信頼関係ができると思っています。