発車時刻の10分後に来たのは、2時間前に出発予定のバスだった 「安かろう悪かろう」の米グレイハウンドバス「鉄道なにコレ!?」【番外編・上】
歌手ビリー・ジョエルさんの曲「ニューヨークの想い」にも登場する米国の都市間高速バス「グレイハウンド」は、「走る犬」のイラストを装飾したバスのデザインとともに米国文化の一部として定着している。だが、トリップアドバイザー(米国版)の利用者評価は5点満点中1・5点と評価は地をはい、口コミサイトでも「絶対に乗るべきではない」などとさんざんの書かれようだ。首都ワシントンから主要都市ニューヨークを往復して確かめたところ、大幅な遅延に加えてずさんな運行情報、さらには安全面を脅かすトラブルなど聞きしに勝る「安かろう悪かろう」の驚愕体験が待ち受けていた…。(共同通信=大塚圭一郎) 【グレイハウンド】米国の都市間高速バス運行会社。1914年に設立され、社名は犬のグレイハウンドに由来する。グレイハウンドによると、グループ会社を含めて米国とカナダ、メキシコの計約2300カ所を路線網が結んでおり、年間利用者数は1600万人弱。新型コロナウイルス流行による業績悪化を背景に、2021年10月にドイツの公共交通機関運行会社、フリックスによって買収された。
▽片道「2900円」で個人的には評価爆上がり 2023年9月9~10日にニューヨークを訪れる用事があり、全米鉄道旅客公社(アムトラック)のワシントンからニューヨークへの列車の普通席料金をインターネットで検索したところ片道138ドル(1ドル=148円で約2万420円)と通常より高い。 アムトラックは消費者の需要と供給を考えて料金を変える手法「ダイナミックプライシング」を採用しており、日本人24人を含めた約3千人が犠牲となった2001年の米同時多発テロ事件で崩壊した世界貿易センタービル(WTC)跡地での9月11日の追悼式典を控えて料金が上がっていたようだ。 そこで通常ならば5時間程度とアムトラックより1時間半~2時間長くかかるものの、料金は総じて安い高速バスを調べると「片道20ドル(2960円)」とアムトラックの約7分の1のお値打ち料金がヒットした。複数の友人に「やめたほうがいい」と忠告されていたグレイハウンドだったが、諸経費を含めても往復43・97ドル(約6510円)という安値に個人的には評価が爆上がりした。筆者は普段鉄道旅行を好んで選ぶが「本当に悪いかどうかは乗ってみないと分からない」と偏見を捨て去り、「切符購入」のアイコンをクリックした。 ▽公式サイトは定刻発車予定…でも「1時間遅れるわ」