発車時刻の10分後に来たのは、2時間前に出発予定のバスだった 「安かろう悪かろう」の米グレイハウンドバス「鉄道なにコレ!?」【番外編・上】
▽出発は定刻の2時間8分後 午前9時を過ぎてもグレイハウンドの公式サイトの出発予定時刻は一向に更新されない。後ろに並んでいた中南米系とおぼしき女性はニューヨークからアメリカン航空に乗り継ぐ算段だったようで、予約センターに電話してスペイン語で「バスが遅れていてまだワシントンにいるの」と予約便の変更を掛け合っている。 10時が近づくと、列にいた別の女性がしびれを切らして「案内所に確認してくるわ」と言うので後を追った。案内所の係員は「先ほど出発したと連絡があったよ」と返し、女性は「えっ、ニューヨークを出たということ!?」と焦りの色を濃くした。 「いや、車庫を出発したところだ」との返事だったが、遠く離れた車庫の可能性もある。車庫の場所を尋ねるとワシントン近郊の地名だったので胸をなで下ろし、列に戻った。首を長くして待っていたバスが入ってきたのは10時25分だった。 扉から車外に出てきた黒人の女性運転手から遅れに対する謝罪の言葉は全くなく、「8時半発のニューヨーク行きです」と平然と呼びかけた。運転手は自分のスマホで利用者の乗車券のQRコードを読み取り、座席番号を伝えていく。私は前方から2列目の座席だ。
定刻の2時間8分後の10時38分、バスが出発する合図の2回のクラクションとともに動き出した。公式サイトの運行情報はこの段階でもワシントン発が「09:00am」、ニューヨーク到着予定は「01:35pm」と30分遅れの予定を表示し続けていた。 ▽1列目が空席の理由 バスは通路を挟んで左右2列ずつの4列の座席が並んでいる。Wi―Fiを備えているものの、接続状況は不安定だった。なお、最後尾の便所は手洗い用の洗面器がない…。 グレイハウンドを含めたバスは、運転手の直後にある1列目の席は空席にしていることが多い。運転手が自分の荷物を置けるようにし、新型コロナウイルス感染防止も狙いのようだ。他にもう一つの理由がありそうなのは帰路に知ることになる…。 バスの走行距離は約370キロで、定刻ならば4時間35分で結ぶ。米東部をフロリダ州からメーン州まで南北に結ぶ州間高速道路「I-95号線」を北上し、人口が約57万人(米統計局の昨年7月推計)とメリーランド州最大の都市、ボルティモアのバスセンターに午前11時半すぎに到着した。乗客を乗せて午前11時50分ごろに出発してI-95号線を再び北へ向かうと、1時間後にバスは高速道路沿いの駐車場に止まった。