実際に引っ越して“最も不便”に感じた地方移住の意外な「デメリット」…東京とは大違いな「ゴミ問題」の実態とは
だったらごみ収集所は使わせない
このように、ここ唐津には、東京にいた時では考えられないような、難儀なゴミ出し事情が存在する。しかし、さらに困難な話を聞いた。北陸の某市と東京で二拠点生活をする知り合いは、町内会に入ることを拒否した。というのも、町内会に入れば、何らかの行事を仕切ったりする必要が出てくるのだが、もしその時に東京にいた場合は参加できないし、そもそもとして、合理的な人物のため町内会の存在を無駄だと考えているからだ。 すると町内会は驚きの“報復”に出たのだ。同氏に対し、「だったらゴミ収集所は使わせない」と言ってきたのだ。そこで町内会費を払って収集所を使う、という手はあったものの、何かと煩わしいことは多いし、そもそも参加しづらい状況であることを鑑み、改めて、町内会への参加は断った。 結局、ゴミを捨てるには、ゴミ袋を車に積んで、大家の家に持っていき、大家さんの使うごみ収集所で捨てる、ということになったという。大家は「そりゃ大変でしたね……」と同情してくれたが、同氏はこのしきたりを時代遅れだと考えている。
別世界のような状況
このように都会の人からすれば別世界のような状況だが、抜け道はいくつかある。まず、ラベルと蓋を外しておけばペットボトルはスーパーで捨てることが可能なのだ。あと、これはあまりやりたくないものの、懇意にしている飲み屋があれば、瓶と缶はその店に持って行けば回収してもらえる。 とにかく月に1回しかない不燃・瓶・資源ゴミの日を徹底的に頭に入れ、監視人が出てこないであろう朝3時に捨てに行く、前月に出張があり、出せなかった場合は、一気に2ヶ月分を持っていく、というのが毎月のルーティンになっているのだ。東京から地方への移住をお考えの方は、美味しい空気や大自然ばかりに気を取られず、該当地域のゴミ捨て事情についても、あらかじめ注意されたい。 中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう) 1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。 デイリー新潮編集部
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