“久常ルート”に感じた焦り 「欧州でまだ上手くなれる」 /中島啓太インタビュー <後編>
「自分は、その程度にしか思われていないんだ」
もっと、上手くならないと―。そう強く感じた場面があった。49位で終えた「パリ五輪」。初日を終えて松山英樹が8アンダー単独首位、自身は1アンダー29位のスタートだった。 ―『チームメートの松山英樹選手とは7打差がありますが、どう思いますか』 取材で受けたその質問が、悔しかった。 「五輪までの2試合は予選落ちで、五輪前に一度日本にも帰ったし、確かに負け続きだった。それでもボクは、“松山さんとの差”は関係なく、“トップと何打”あるかを考えてプレーしていたから。やっぱり、自分はその程度にしか思われていないんだと悔しかった。松山さんと、同じところに行かないといけない」 松山を追いかける立場なのは分かっている。それでも、“メダル争いの候補”に見られなかったことが悔しかった。
小技とアグレッシブさを身に着けた
欧州ツアーを回った1年で、飛距離やパワーだけに頼らない強さを学んだ。 「向こう(欧州ツアー)の選手は、飛ばせるけど飛ばさない。もちろん必要なときは飛距離を出すけど、コース自体が難しいので抑えたフェードで攻めたりする。あとは、ショートゲームが上手い選手が目立つ印象。欧州4勝のライアン・フォックス選手(ニュージーランド)もそうですが、ボギーを打つだろうなという所に外しても絶対にパーで上がってくる」 特に上達したのはピンのショートサイドからのアプローチだった。「ショートサイドに落とした方がバーディチャンスになるし、外してもそっちのほうが難しくないと途中から気づいた。振って飛ばないアプローチだけ覚えておけば良い。その練習をたくさんして、終盤はかなり良くなった」 7位に入ったシーズン最終戦「DPワールド ツアー選手権 ドバイ」は、50yd以内のショットのスコア貢献度を示すスタッツでフィールド9位。ショートゲームの自信は、アグレッシブな攻めにもつながった。 「欧州はタフなピン位置でも、攻めたらご褒美がある。近づけば近づくほど良い。だから、例えばバンカーを避けてレイアップするというのはなくなった。とにかく近づくことを優先して、バンカーで逃げたことは一回もない。そこは日本から変わった部分ですね。…でも、アプローチが良くなったのに、ピン位置によっては体が反応してセーフティに逃げてしまうこともある。そういう時は、かなりイライラしますね…」 プレー中、感情をリアクションに出して消化するようになったのも、欧州を戦って変わったことだ。