ローブ、ダカール初制覇の夢が絶たれる。3台で戦う”チーム・アウディ”を「打ち負かすチャンスはなかった」
ダカールラリー2024で総合2番手につけ、逆転優勝を狙っていたセバスチャン・ローブ(プロドライブ)。しかし420kmのステージ11で大きくタイムロスしてしまい、総合3番手に後退。優勝は絶望的となった。 【動画】ダカールラリー2024:ステージ10ハイライト ローブは今回のダカールラリーで最も危険なステージのひとつで、総合首位に立つカルロス・サインツSr.(アウディ)に対する13分のギャップを縮めなければならなかった。 しかしローブは132km地点でジャンプして着地した際に、マシンの右フロントAアームを破損させてしまったのだ。これが原因で立ち往生することになってしまった。 ローブはプロドライブのアシスタンス・トラックに助けを求めたが、アシスタンス・トラックはステージのスタート地点にさえ配置されていなかった。ローブは結局、プロドライブ・ハンターを駆るカスタマーチームのドライバーであるジー・ユンガンからスペアパーツを譲り受け、走行を再開することができた。 その後も複数回のパンクに見舞われたものの、ローブはなんとかステージを走り終えた。しかし総合順位ではオーバードライブ・トヨタのギヨーム・ド・メビウスの後ろ、総合3番手に後退。サインツSr.との差は1時間36分2秒に大きく開いた。 同じプロドライブのマシンを駆るナッサー・アル-アティヤがまだ走行を続け、ローブのサポートをしていれば、これほど大きな差が生まれることはなかったかもしれない。しかしアル-アティヤは信頼性トラブルに相次いで見舞われ、ステージ9でリタイアしてしまった。 対するアウディは、マティアス・エクストロームとステファン・ペテランセルがサインツSr.をしっかりとサポート。サインツSr.がパンクなどに見舞われても、他2台のマシンに積まれたスペアタイヤを使用したり、タイヤ交換を手伝ったりとサインツSr.の総合優勝のために万全のバックアップ体制を整えていた。 ローブはこうした違いが大きな差を生み出しており、ダカールラリー初制覇を果たすチャンスはなかったと感じているようだ。 「自分たちがやったことには満足している」 そうローブは語った。 「僕らが望んでいたようにはいかなかったのは確かだ。結局、チーム・アウディに勝つチャンスはなかった。彼らは一緒に走っていた。彼らは2台のマシンでカルロスをサポートしていたんだ」 「彼は安全だった。昨日は3回もパンクしていたのにね。僕は3回もパンクできなかった。そうなっていたら、スタックしていただろう。アウディのような完成されたチームとひとりで戦うのは難しいよ」 アル-アティヤをリタイアさせたのは、良くない決断だったかと聞かれたローブは次のように答えた。 「結局、ナッサーは自分のやりたいことをやっている」 「だから彼のリタイアは僕たちの決定ではない。でも、今日のアウディに勝てる見込みがなかったのは確かだ。ステージの状況を見ると、パンクしまくりで単独走行だったのだから、チャンスはなかった」 ローブを襲ったステージ11での不運は、132km地点でマシンが修復された後も終わらず、さらに3度のパンクに見舞われた。スペアタイヤの数が限られているなか、ローブは”完全に破壊された3本のタイヤ”を使い、速度を落としながらフィニッシュラインを目指すことを余儀なくされた。 アクシデントに見舞われる前も含め、ステージ全体で何回のパンクに見舞われたかと尋ねられると、「5回だ。パンクしたタイヤはリムまで再利用しなければならなかった」とローブは答えた。 「一度(パンクしてタイヤが潰れ)リムで走るような状態になってしまうと、石にぶつかって潰れてしまい、外せなくなってしまうかもしれないんだ」 「だからそうなってしまった時には、まだタイヤが残っているホイールと交換した。最後の一本を戻した時には、時速50kmで走っていたよ」 ステージ完走を半ば諦めていたというローブは、彼の試練を考えれば完走は小さな奇跡なのかと尋ねられ、次のように答えた。 「ヘリコプターで戻ってトラックを待とうかとも考えたんだけど、砂漠の真ん中にクルマを置き去りにするつもりはなかったんだ」 「回収するのに苦労しただろうからね。今日は予定がなかったから、トラックを待とうと思ったんだ! 結局中国のドライバーが来てくれて、それでパーフェクトだった」 「リタイアかと思った。結局、また走り出すことができたんだ。だから小さな奇跡だよ。でもどうだろう……嬉しくない奇跡だね!」
Rachit Thukral