ドレイクやジェイムス・ブレイクも注目するシャーロット・デイ・ウィルソン その音楽の根底にあるものとは?
――ちなみに、ステージでは曲によって2色のライトが使い分けられていたのも印象的でした。新作の「Cyan Blue」の曲はアルバムのキーカラーである青、そのほかの曲はオレンジ(※以前の彼女は、自分がつくる音楽について「オレンジと黄色のオンブレ」のイメージと語っていた)のライトが使われていたのかな、と終演後にふと思ったのですが。
シャーロット:会場のライティング・テクニックを使っていたのでそこまで意図的ではなかったけど、ただ、使用する色についてはかなり具体的に指示を出したので、その範囲内でスタッフが自由にクリエイティブな裁量を発揮してくれたんだと思う。
――その新作のキーカラーである「青」は、アルバムのアートワークやアーティスト写真にも象徴的に取り入れられていて、そのイメージは愛や内省をテーマにした作品のストーリーとも深く結びついています。その制作にあたってインスピレーションを受けたものとして、アート評論家のマギー・ネルソン(Maggie Nelson)が2009年に書いた「Bluets」という本を挙げられていましたが、それはどういった示唆を与えてくれた本だったのでしょうか。
シャーロット:あの本は、なんというか……表現するのが難しいけど、ある種の“アート小説”のようなものというか。著者が人生のある時期、「青」という色に深く魅せられて、その色を通して世界と自分自身をつなぎ留めるための“ポエティック”な方法を見つける――というような内容で。つまり、彼女にとって「青」は、特定の場所や状況で現れることで、周囲の環境とのつながりを感じさせる特別な色だったんだと思う。そして、このアルバムに取り組んでいる間、私も同じような経験をしたの。「青」という色に強く惹かれ、マギー・ネルソンをはじめとする、私にとって重要なアーティストたちとの共鳴を感じて。私も、彼女らが人生で経験した“青の時代”をめぐる対話に参加したかった。私たちはみんな、人生においてお互いにつながっていると感じたいと思っているし、自分のいる世界と深く関わっていたいと願っている。そのことにあの本を読んであらためて気付かされたわ。